親の老後を迎えてあわてないために知っておきたい3つのこと

老後は誰にでも訪れるものです。特に親が高齢になってくると、さまざまな面で子どもに負担がかかってきます。費用のこと、介護のこと、誰が面倒を見るのかといった問題が起こり、中には予期せぬことが発生し兄弟でいさかいが起こることもあります。

親の老後に備えて知っておくべきことをまとめました。

1.親の老後で直面する問題

親が高齢になってくると、次のような問題が発生する可能性があります。

  1. 住まいの問題
  2. お金の問題
  3. 介護の問題

ここではそれぞれを深く掘り下げてみてみたいと思います。

2.親の老後~住まいの問題

親の老後~住まいの問題

高齢になると誰でも足腰が弱ってきたり、物忘れがひどくなったりして、年老いた親だけで生活するには何かと不便な点や不安な点が増えてきます。そこで問題になるのが住まいに関することです。

その場合の選択肢として、

  1. 親と同居する
  2. 別居してたびたび様子を見に行く
  3. 老人施設に預ける

の3つの方法があります。

2-1.親と同居して面倒を見るケース

同居の場合はもともと一緒に住んでいたケースと、高齢になった親を自分たちの家に引き取るケース、二世帯住宅を建てる(またはリフォームする)ケースがあります。

2-1-1.もともと同居していた場合のメリットと問題点

もともと同居していた場合は親の変化に早く気づくことができ、その分対策も早くに取ることができます。

例えば、

  • 最近、よく物を落とす(指先に力が入っていない)
  • ろれつがまわらないことがある
  • 顔の半分がまひしている

などがあれば脳卒中のサインかも知れません。もしこのような症状があれば、すぐに病院を受診するようにすすめてあげましょう。

また、同居していれば家族(娘や息子の嫁など)が栄養に配慮した食事を作ってあげることもできます。

このようなメリットがある反面、病院通いや介護が必要になったときの負担は同居家族の肩に重くのしかかります。離れて暮らす兄弟などが無責任に思えてストレスがたまることがあります。

さらにバリアフリーになっていない住まいの場合は手すりをつけたり段差をなくしたりといったリフォームの必要があり、費用がかかります。

2-1-2.自分たちの家に引き取る場合のメリットと問題点

それまでは離れて暮らしていた親が高齢になったからという理由で自分たちの家に引き取ることがあります。特に認知症の傾向が出てきて、ガスコンロの消し忘れや鍵の締め忘れなど防犯面での不安が大きくなったときがそのタイミングになることが多いようです。

離れて暮らしながら心配するよりは同じ家に住んでいる方が安心というメリットがあります。一方、この場合の問題点としては、配偶者や子どもとの摩擦が生じるということがあります。

今までの家族の生活に突然高齢者が入るわけですから、最初は優しい気持ちで受け入れていたとしてもしばらくするとお互いに不満が出てきます。

よくある声としては以下の通りです。

<迎える側の不満>

  • ずっと家にいるなら家事を手伝ってほしい
  • 食費や光熱費が余分にかかる
  • 子どもの教育に口を出す

<親の側の不満>

  • 息子の嫁に気を遣う
  • 食事や生活習慣が自分たちには合わない
  • 孫に小遣いをやらないといけない
  • 居場所がない

などがあります。

さらに認知症の症状が出てくると、

  • 「財布を盗んだ」と疑いをかけられた
  • 近所を徘徊して周囲に迷惑をかけた
  • トイレを汚す
  • 物忘れがひどくて置いた場所を忘れるなどトラブルが増える
  • 勝手に火を使わないか心配
  • 徘徊してもあとをついて歩くわけにいかず、面倒が十分に見られない

など多くの問題が発生します。高齢者のこういった特徴をよく理解して、家族全員がおおらかに受け入れることが大切です。症状が深刻になった場合は医療機関や行政の相談窓口で相談してみましょう。

 2-1-3.二世帯住宅で暮らす場合のメリットと問題点

二世帯住宅は完全な別居ではなく同居でもないという状態で、しかもすぐに様子を見に行けるというメリットがあります。また、お互いの生活のスペースを確保できるのでストレスが少ないのもメリットのひとつです。ただ、二世帯住宅を建てたり、リフォームしたりすると多額の費用がかかります。早くから老後に備えて家族で話し合っておくといいでしょう。

ちなみに厚生労働省の調べによると、75歳以上になると夫婦のみの世帯が減っていき、子の世帯と同居するケースが増えています。

年齢階級別にみた65歳以上のものの家族形態

出典:厚生労働省 国民生活基礎調査 平成27年

親が高齢になってきたら同居を視野に考えた方がいいと言えそうですね。

2-2.別居していてもたびたび様子を見に行く

遠くに離れて暮らしていると様子を見に行くのは難しいですが、近くに住んでいる場合はできる限り見に行ってあげましょう。そのときは、次の点を注意してみるようにしてください。

  • 最近、同じものをたくさん買っている
  • 鍋を焦がしたあとがある
  • 部屋が散らかっている

同じものをたくさん買ってくるのは軽い認知症の兆候かも知れません。また、鍋を焦がしていたら、火の消し忘れが考えられます。部屋が散らかっているのはやる気がないか、体調が悪いということです。その状態が続くとごみ屋敷になる可能性があります。訪問する回数を増やしてそれとなく様子を見てみましょう。

また近所に迷惑をかけていないか、探ることも大切です。近所で親しく話せる人を見つけて様子を聞いてみてください。何か不安な点があれば、自分たちの家に引き取るかヘルパーさんなどを依頼するなどの対策を考えましょう。

2-3.老人施設に預ける

高齢者は自分の住まいにこだわる傾向があります。「家があるのにどうしてそんなところに行くんだ」と抵抗されると無理強いはできません。ただ、自分たちで面倒を見られないという場合は施設を利用するのもひとつの方法です。費用は施設によって異なります。資料を取り寄せたり、見学会に行ったりして検討してみてください。

そして、親が老後を迎えるまでに「年を取ったらどうするか」を話し合っておきましょう。

3.親の老後~お金の問題

親の老後~お金の問題

総務省統計局の調査によると、老後の夫婦2人暮らしの1ヶ月の消費支出は下記の表のように25~33万円になっています。平均すると月に約29万円が必要ということになります。

ただ、住まいが持ち家で住宅ローンの返済が終わっている場合と賃貸住宅で家賃の支払いがある場合では支出額が違ってきますし、家で米や野菜を作っている場合は食費の額が異なりますが、平均すると毎月30万円近くが必要ということがわかります。

<高齢者世帯の消費支出>

55~59歳 60~69歳 70歳以上
1ヶ月の消費支出額 330,290円 294,726円 245,166円

(参照:総務省統計局 平成27年 世帯主の年齢階級別1世帯当たり1か月間の収入と支出より)

3-1.老後の親の収入源は年金だけ!?

月間30万もの生活費がかかるということですが、親の収入はどうでしょうか?

公的年金や恩給を受給している高齢者世帯の収入源を調査したところ、「公的年金や恩給だけ」という世帯が全体の55%で半数以上であることがわかりました(出典:厚生労働省 平成27年 国民生活基礎調査)。

一方、厚生労働省の発表によると標準的な年金受給世帯の年金額(夫婦の基礎年金と夫の厚生年金を合わせた額)は約23万円となっています。ただし自営業の場合は受取額がもっと少なくなります。これでは老後生活に必要な生活資金である29万円には足りません。退職金や貯蓄を切り崩すか、子どもと同居することになります。

公的年金・恩給を受給している高齢者世帯における公的年金・恩給の総所得に占める割合別世帯数の構成割合

出典:厚生労働省 国民生活基礎調査 平成27年

3-2.老後生活に必要なお金

親の老後で必要になるお金は大きく分けると次の4つになります。

  1. 生活費
  2. 医療費
  3. 介護費
  4. 葬儀代

それぞれを見てみましょう。

3-2-1.生活費

先ほどもご紹介した通り、老後の夫婦が2人で生活するには1ヶ月約30万円前後かかります。住居費や光熱費を抑えるには子どもの家に同居する方法があります。親子でお金を出し合うことでやりくりが可能になるでしょう。

3-2-2.医療費

老後の医療費は65歳から74歳までは前期高齢者医療制度の対象、75歳以上は後期高齢者医療制度の対象になり、窓口での自己負担額は以下のようになります。

年齢 窓口の自己負担
65歳~70歳未満  3割
70歳~75歳未満  2割
75歳以上  1割

※現役並みの収入がある場合は年齢にかかわらず自己負担は3割になります。

また、外来や入院で医療費が高額になった場合でも「高額療養費制度」があり、自己負担額の上限は外来は12,000円、入院は44,400円となっています。ただし入院中の食費や差額ベッド代は自己負担になるので、生命保険や医療保険に加入するか貯蓄で備える必要があります。

 3-2-3.介護費

要介護状態になったら介護保険が使えます。介護保険は介護サービスにかかった費用を受け取るのではなく、介護サービスそのものを受ける制度です。利用者は受けた介護サービスにかかった費用の1割を負担することになります(年収が単身世帯は160万円以上、2人以上の世帯では346万円以上は2割負担です)。

なお、介護保険では居宅サービスを受ける場合、要介護(要支援)の状態によって1ヶ月に利用できる額の上限が設定されています。

要支援1 50,030円
要支援2 104,730円
要介護1 166,920円
要介護2 196,161円
要介護3 269,310円
要介護4 308,060円
要介護5 360,650円

それぞれの要介護の段階で利用したサービスの1割を負担しますが、この限度額を超えた場合は全額自己負担になってしまいます。

また、介護用の食事や医療費、日常生活費などがかかります。施設に入る場合は、それぞれの施設の形態によって自己負担額が異なります。この場合も食事代や住居費、日常生活費が別途かかります。

3-2-4.葬儀代

日本消費者協会の調べでは葬儀費用の全国平均は約200万円となっています。葬儀そのものの費用のほかに寺院に支払う費用や弔問客の飲食接待費、墓代なども必要になります。

ただ、葬儀は規模によってかかる金額が異なります。特に最近は「家族葬」や親しい人だけでの「お別れの会」のような小規模の葬儀を望む方が増えています。その際の費用は50万円程度に抑えることができます。親が健在なときから葬儀のことについて話し合っておくといいでしょう。

葬儀費用には生命保険の死亡保険金や互助会加入などでまかなうことができます。親が何に加入しているか、証券はどこにあるのかを確認しておくことが大切です。

4.親の老後~介護の問題

親の老後~介護の問題

高齢になった親の介護は誰がすべきでしょうか?「面倒を見たいけれど転勤族で難しい」「家が狭いので無理」「嫁がうんと言わない」「自分たちの生活だけで精一杯で親の面倒を見る余裕がない」などさまざまな事情があります。

4-1.親を扶養する義務はあるのか?

法律ではどうなっているでしょうか。民法877条第1項には以下のようにあります。

直系血族及び兄弟姉妹は互いに扶養をする義務がある

直系血族とは祖父母、親、子、孫のように上下の関係にある親族のことを指します。つまり自分の親や祖父母に対しては扶養する義務があるということになります。

ただ、これには条件があり、「親に十分な生活能力がなく、他からの援助を受ける必要性がある場合」となっています。さらに「自分の収入や地位などに見合った生活をしていて、そのうえで余裕があれば援助すべきである」としています。

法律では自分の生活を犠牲にしてまで親を扶養する義務はないということになります。

なお、この場合の子は兄弟すべてが対象です。長男だけに扶養の義務があるというわけではありません。兄弟でよく話し合うことが大切です。

4-2.実際に親の介護をしているのは誰?

実際に高齢者の介護を誰がしているのかという調査結果を見てみると、下のグラフのように多いのが配偶者です。高齢の夫婦が助け合っている様子がうかがえます。次に多いのが子、そして子の配偶者となっています。

ただし、同居の家族で介護をしているのは女性が7割近くあることから、娘や息子の嫁が介護を担っていると考えられます。

要介護者等との続柄別にみた主な介護者の構成割合

出典:要介護者等とその続柄別にみた主な介護者の構成割合(厚生労働省 平成25年)

4-3.介護をしてくれた人に相続財産を渡す方法も

「息子の嫁に迷惑をかけたくない」という人が多いかと思いますが、現実的には一番お世話になる確率が高いのが子の配偶者でしょう。

お世話になったお礼に相続財産を残すという方法があります。相続は配偶者、親、子、兄弟が法定相続人になり、子どもの嫁は法定相続人にはなれません。しかし、特別に相続財産を渡したいという場合は「遺言書」にそのことを記しておく方法があります。これなら法定相続人ではないけれど介護してくれた人に感謝の気持ちを残すことができます。

また、相続の法定相続分は子ども同士は均等に分けるように決められています。ただ、介護など故人に特別に貢献した場合は「寄与分」としてほかの人よりも多く相続財産を渡すことができます。この場合も遺言書に書いておくと安心です。

もし遺言書がなくても残された遺族の話し合いで、「介護をした分として多めに相続財産を受け取る」とすることも可能です。家族の中で誰かに介護の負担がかかる場合はなんらかの形で報いるようにするといいでしょう。

まとめ

親の老後は誰もが直面する問題です。その際に知っておくべきポイントは次の通りです。

  • 離れて暮らす場合は火元の安全や戸締り、健康面での配慮が必要で、時々見に行くことが大切
  • 同居する場合は手すりをつけたり、バリアフリーにしたりして転倒防止や安全面に配慮する
  • どうしても面倒が見られない場合は老人ホームなどを検討する
  • 高齢者の収入源は公的年金だけというケースが多いが、それだけでは生活費は不足する
  • 子どもと同居してお互いに経済的に助け合うのがベスト
  • 医療費や介護費、葬儀代の備えを保険や貯蓄でしておく

これらのことは兄弟で話し合って、誰かひとりだけに負担がかからないようにしましょう。ひとりっ子の場合は早めに両親を呼び寄せて一緒に暮らすなど準備を進めると安心です。

スポンサーリンク