老後の保険の見直しのコツ~いざという時に困らない保険のハナシ

元気に長生きして天寿をまっとうする「ピンピンコロリ」が理想ですが、現実はなかなか思うようにはいきません。加齢とともにさまざまな病気のリスクが高まります。認知症や寝たきりになると長期間、医療費や介護費用が必要です。そのための備えはできていますか?

老後の保険について考えてみましょう。

1.老後の医療費はどれくらい必要?

まだまだ若いと思っていても、65歳を超えるとさまざまな場面で老化を実感します。しかも免疫力や抵抗力が低下しているために、病気になりやすく治りにくいのが特徴です。シニア世代では、医療費はどれくらいかかるのでしょうか?老後の病気の実態を通してみていきましょう。

1-1.65歳以降は病院での受診が増える

厚生労働省「年齢階級別にみた施設の種類別推計患者数(平成26年10月)」によると、65歳を過ぎると入院も外来も増加しています。

年齢階層別の受療率(単位:千人)

入院(病院・一般診療所の合計) 外来(病院・一般診療所の合計)
45~49歳 36.8 329.5
50~54歳 46.0 363.4
55~59歳 59.1 410.3
60~64歳 95.6 585.0
65~69歳 123.6 760.6
70~74歳 144.3 854.5
75~79歳 165.2 777.2
80~84歳 188.9 613.8
85~89歳 170.9 348.3
90歳以上 144.4 155.8

(出典:厚生労働省「年齢階級別にみた施設の種類別推計患者数」)

1-2.高齢になると入院日数が長くなる

また、下の表のとおり、65歳以上の高齢者にはがんや糖尿病、高血圧性疾患、脳血管疾患、心疾患など重篤な病気が増加しています。

患者調査 主な病気の患者数(単位:千人)

50~59 60~69 70~79 80~89 90~
感染症(結核など) 122 203 220 117 19
がん 253 485 601 352 43
糖尿病 385 952 1,041 475 58
高血圧性疾患 1,135 2,789 3,316 2,150 429
脳血管疾患 62 211 404 378 95
心疾患 110 365 574 482 139
骨折 55 79 125 129 38

これらの病気による入院日数は胃がんの場合、平均19.3日ですが65歳以上は21日、75歳以上は25.7日と長くなります。また、糖尿病での入院は平均35.5日に対して65歳以上は47.4日、75歳以上は65.2日になっています。脳血管疾患では75歳以上は116日と長期入院であることがわかります。

出典:「入院した場合、入院日数は何日くらい?|公益財団法人 生命保険文化センター」「H26患者調査|厚生労働省

なお、1回の入院時の自己負担額は平均約23万円というデータが出ています(生命保険文化センター調べ)。これには治療費以外に差額ベッド代や食事代なども含まれますが、結構かかりますね。

2.老後の公的医療保険

一方、医療費の備えはどうすればいいでしょうか?日本は「国民皆保険制度」があるため、公的医療保険が利用できます。

2-1.定年退職後の健康保険

定年退職すると、それまで勤めていた会社の健康保険が使えなくなります。任意継続被保険者になる方法もありますが、2年間だけです。それ以外は息子(または娘)の扶養家族になるか国民健康保険に加入することになります。

2-1-1.扶養家族になる場合

こどもの扶養家族になるには、親の年齢と年収の条件があります。

  • 60歳未満……年収130万円未満
  • 60歳以上……年収180万円未満

この条件を満たしていれば同居でなくても子どもの扶養家族になれます。子どもがサラリーマンや公務員などで社会保険に加入していれば、扶養家族が増えても保険料が上がることはありません。

2-1-2.国民健康保険に加入する場合

子どもの扶養家族になれない場合は国民健康保険に加入します。この場合の保険料は所得割と均等割で計算されます。計算料率は自治体によって異なりますし、所得や加入する人の数でも異なってきます。

詳しくはお住まいの自治体で相談してみてください。

2-2.公的医療保険は前期高齢者と後期高齢者に分かれる

高齢者の公的な医療保険は「高齢者医療制度」と呼ばれるものがあり、「前期高齢者医療制度」と「後期高齢者医療制度」に分けられます。

2-2-1.前期高齢者医療制度

65歳から74歳の人が対象で、それまで加入していた国民健康保険や健保組合などの健康保険で受けていた療養の給付や高額療養費の給付などはそのまま受けることができます。

なお、70歳~74歳の方の医療機関の窓口で払う医療費の自己負担額は、年齢や収入によって異なります。

70~74歳 窓口の自己負担 入院時の食費と居住費(※2)
現役並みの収入がある人(※1) 3割 1700円/1日
誕生日が昭和19年4月2日以降の人 2割 1700円/1日
誕生日が昭和19年4月1日までの人 1割 1700円/1日

※1:現役並みの収入とは住民税課税所得が145万円以上、前年の収入が383万円以上などですが、詳しい条件は加入している健康保険にお問い合わせください。

※2:入院時の食費と住居費は低所得者の場合は安くなります。

また、窓口で支払う医療費が高額になった場合は、後で戻ってくる「高額療養費制度」があり、実際に負担する額は下の表のように一定額でおさまるようになっています(ただし、この制度には先進医療など保険適用外の医療費や入院中の食費、生活費、差額ベッド代などは含まれません)。

限度額
外来 入院
現役並みの収入がある人 44,400円 80,100+(総医療費-267,000円)× 1%

多数該当:44,400円

一般 12,000円 44,400円
低所得Ⅰ 8000円 24,600円
低所得Ⅱ 8000円 15,000円

2-2-2.後期高齢者医療制度

後期高齢者医療制度の対象となるのは、75歳以上の人と65歳~74歳で一定の障害状態にあると認定を受けた人です。後期高齢者医療制度に加入すると、それまで加入していた健康保険から脱退します。

窓口での事故負担額と高額療養費の自己負担限度額は以下の表の通りです。

窓口自己負担 高額療養費自己負担限度額
外来 窓口
現役並みの所得がある人 3割 44,400円 80,100円+(医療費-267,000円)×

1%

(多数該当の場合、4ヶ月目以降44,400円)

一般 1割 12,000円 44,400円
低所得Ⅰ 1割 12,000円 24,600円
低所得Ⅱ 1割 8,000円 15,000円

後期高齢者医療制度の保険料は対象の人一人ひとりが納めます。納入先は市町村で、徴収も市町村が行います。保険料の計算は対象者一人ひとりに課される「均等割額」と所得に対して課される「所得割額」の合計金額になります。なお、保険料率は市町村によって異なります。

3.老後の保険は必要?

老後の保険は必要?

このように65歳以上で現役並みの収入がない場合は、医療費の窓口負担は2割、75歳以上は1割と少なくなります。また、外来や入院時の医療費が高額になっても、1ヶ月の自己負担の限度額が外来は12,000円、入院は44,400円で済むようになっています。

ただしこの「高額療養費制度」は、食費や差額ベッド代は自己負担になりますし、保険適用が認められていない抗がん剤を使用する場合なども対象外になります。なお、人工透析など一部の治療は「健康保険特定疾病療養受療証」を交付してもらうと、1ヶ月の治療費の上限は1万円になります。

公的医療保険を利用することで自己負担はかなり抑えることができます。それで不足する分を生命保険や民間の医療保険で補うといいでしょう。

3-1.老後の保険の見直し方法

民間の医療保険には、

  • 死亡時に死亡保険金が受け取れる生命保険
  • 入院日数に応じて1日あたり5,000円や1万円などの入院給付金が出る医療保険
  • 手術に応じて手術給付金が出るもの
  • がんと診断されたときに一時金が出るもの

などがあります。なお、一般的に手術給付金は入院給付が受け取れる保険ならば、手術内容に応じた倍率で受け取れるようになっています。また、がんの診断一時金以外に脳血管疾患や心疾患になり一定の状態が続いた場合に受け取れる「三大疾病特約」などもあります。

テレビや新聞・雑誌などでもさまざまな保険のCMがあり、「なんとなく必要を感じる」「でもどれがいいのかわからない」と迷っている方が多いのではないでしょうか。

3-1-1.保険はまず現在加入しているものを見直す

民間の生命保険や医療保険は年齢が上がると保険料が高くなります。特に50歳以降は保険料がかなり高くなる上に、加入時の告知(健康診断のチェック)で引っかかる場合があります。そこでまず現在加入している保険を見直してみましょう。見直しのポイントは次の通りです。

保障がいつまで続くのか

保障期間が10年や15年となっている場合は、病気になる確率が高くなる高齢期に保障が切れる可能性があります。同じ内容で更新すると保険料が高くなります。そのときの選択肢としては、

健康状態に問題がある場合→

  1. 新規に加入できないのでそのまま更新する
  2. 保障額を下げて更新する

健康状態に問題がない場合→

  1. 現在加入の保障内容を見直して更新する

といった方法があります。保障内容と保険料をよく検討してください。

3-1-2.保険の見直し方法

保険の見直し方法には、

  • 現在の保険を解約して新たに別の安い保険に加入する
  • 死亡保障や入院特約などの特約部分を一部解約して保障を小さくする
  • 保障を小さくする「減額」の手続きをする
  • 支払いを中止して同じ保険期間で保障を小さくする「払済保険」の手続きをする
  • 支払いを中止して同じ保障額で保険期間を短くする「延長保険」の手続きをする

がありますが、老後の保険を考える場合は保障を小さくする減額や払済、延長などの手続きを取るといいでしょう。ただし、保険商品によってはできないものがあるので、加入している保険会社に聞いてみてください。

見直す場合は保障内容がそれで足りるかどうかを考える必要があります。入院給付日額が5000円であれば、仮に10日間入院することになっても入院給付金として5万円受け取ることができます。病院で支払う医療費の1ヶ月の自己負担限度額は一般の高齢者は44,400円なので5万円あればそれでまかなえます。

ただ、それだけでは不安だという場合の備えとして貯蓄する方法があります。貯蓄なら上記でご説明したように1入院で23万円程度かかったとしても安心ですし、医療費以外のことに自由に使えます。

3-1-3.老後の保険は払い続けられるかどうかがカギ

長い老後生活の間で経済的な変化が起こる可能性があります。保険に加入する場合は、払い続けられるかどうかをよく考えましょう。

保険料の負担が大きい場合は保険に頼らずに貯蓄して医療費を備えるという方法もあります。本当に払い続けられるかどうかをよく考えましょう。退職金が入る場合はそのお金で残りの保険料を一括して支払う方法もあります。ほかの使い道と合わせてよく検討してみましょう。

3-1-4.医療保険はどの病気になりやすいかをよく考えよう

自分がどんな病気にかかるかはわかりませんが、家系的に高血圧症が多いとか糖尿病が多いという場合は自分も同じ病気になる可能性があります。

それを考えてその病気に手厚い保険を選ぶのもひとつの方法です。また、最近は「持病があっても入れる」という保険も多く出ています。ただし、当然のことながら健康な人が加入するよりも保険料は高くなります。特に50歳以降の新規加入は保険料がかなり高くなるので、払い込む保険料と受け取れる額をよく比較して検討することが大切です。

3-2.老後の死亡保障の見直し方法

死亡保障の本来の目的は、残された遺族が生活に困らないためということです。高齢になると子どもはひとり立ちしているので、家庭を支えるという意味での大きな死亡保障は必要ありません。

3-2-1.死亡保障は葬儀代があればOK

高齢者の死亡保障の多くは「葬儀代」として充てることになります。以前は葬儀代は平均200万円と言われていました(日本消費者協会の調査)。しかし、最近は家族や親しい人だけで執り行う「家族葬」などの小さなお葬式が増えています。家族葬なら50~60万円程度で葬儀を行うことができます。

墓の費用などを合わせても死亡時に100~200万円程度あればいいということになります。葬儀費用の準備のための「葬儀保険」もあるので検討されてはどうでしょうか。よって、もし1,000万円以上の死亡保障に加入している場合は、一度見直しをされるといいでしょう。

3-3.生命保険は相続税対策に使える

生命保険は遺族の生活資金という目的以外に相続税対策としても使えます。もし土地や建物など不動産の相続財産が多い場合は、相続時にすぐに換金ができません。その場合の相続税の納税資金として生命保険を使うことができます。

また、生命保険には「500万円×法定相続人の数」が非課税枠として認められています。妻と子ども2人の場合は500万円×3=1500万円が非課税扱いになります。もし預金や現金で多額の相続財産を持っている場合は一時払いの終身保険などに加入しておくと、相続税を軽減する効果があります。

さらに遺産相続時に不動産など分けるのが難しい場合に、死亡保険金を相続財産として使うことができます。

 (例)

長男には家と土地を相続させ、次男には生命保険の死亡保険金2000万円を渡す(このことを遺言書に残しておくとより確実です)。

3-4.生命保険で貯蓄はできる?

終身保険や養老保険、個人年金保険などは貯蓄性がある保険ですが、それは「若いころに加入すれば……」という前提での話です。高齢になってから加入すると保険料が高くなるために、返戻率(払った額に対して受け取れる額の割合)があまりよくありません。

その中でおすすめできるのは一時払い終身保険ですが、これも返戻率を計算してほかの投資方法とよく比較するようにしましょう。

まとめ

65歳以降は病院での受診が増えていき、入院日数も長くなることがわかっています。しかし、公的医療保険が使えるので窓口での自己負担は2割(75歳以降は1割)で収まります。また1ヶ月の医療費が高額になった場合でも、自己負担の限度額が設けられているので、それ以上の分は後で戻ってきます。これらの制度をよく理解した上で必要な保険を選択しましょう。

老後の保険の見直しとしては、次のポイントをチェックしておきましょう。

  • 今、加入している保障がいつまで続くのかを調べる
  • 更新時にそのまま継続すると保険料が高くなるので特約を減らしたり、保障を減らす減額をしたりして保険料負担を抑える
  • 保険料が負担になる場合は「払済保険」や「延長保険」に切り替えることも可能
  • 新規に加入する場合は最低限必要な保障額に抑える
  • 死亡保険金は相続税対策として使える

保険の見直しには正解がありません。個々のケースで異なるので、いくつかの保険商品をよく比較してみましょう。

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