認知症の疑いがある親を病院に連れていく方法とおすすめの病院

認知症の症状とその疑いがある親を病院に連れていく方法

親や祖父母が認知症かも知れない……。そう思って病院での受診をすすめても、本人は「まだボケていない!」と主張して行こうとしないというのはよくある話です。無理やり引っ張っていくわけにもいかず、しかし放置しておけないとお悩みの方に、認知症の症状と受診に関して知っておきたいことをまとめました。

1.認知症の症状を知ろう

認知症の症状を知ろう

「最近、父親や母親の物忘れが多い気がする」「なんだか変なことを口にする」など、「これってもしかして認知症?」と思うことはないでしょうか。誰でも年を取ると記憶力が低下しますが、認知症の症状は物忘れだけではありません。家族を病院に連れていく前に、まず「認知症とはどんな病気なのか」を理解しておきましょう。

1-1.認知症と老化の違い

実は認知症の原因が何であるか、まだ正確には解明されていません。しかし、さまざまな研究から「老化」と「認知症」は異なることがわかっています。老化による物忘れは「体験した出来事の一部を忘れるもの」といわれます。体験したことのすべてを忘れているわけではないので、何かヒントがあれば思い出せるのが特徴です。

一方、認知症は体験自体を忘れてしまうもので、ヒントがあっても思い出せません。

ほかにも次のような違いがあります。

認知症の特徴 老化による物忘れの特徴
忘れたことを理解できない 忘れたことを自覚している
食べたことそのものを忘れてまたほしがる 食べたことは覚えているが、何を食べたのか思い出せない
モノをなくしたときは「誰かが盗んだ」と思い込む モノをなくしたときは自分が置き忘れたと思って探そうとする
帰り道や現在の場所がわからなくなる 行き先を間違えることはあるが、現在の場所がどこかわからなくなることはない
新しいことが覚えられない 新しいことを覚えることができる

1-2.認知症と老化の原因の違い

認知症と老化ではその原因が異なります(原因は現時点でわかっているものの中でもよく見られるケースです)。

1-2-1.認知症のタイプ別原因

認知症には次の4つのタイプがあります。

1-2-1-1.アルツハイマー型認知症

脳に特殊なたんぱく質が蓄積して、記憶をつかさどる海馬(かいば)などを中心に広範囲が委縮します。それによって脳の神経細胞が失われて認知症を発症します。認知症全体の約半数を占めるといわれています。

主な症状
  • 発症前期…物忘れ・不安・憂うつなど
  • 初期…記憶障害(最近のことが思い出せない)、日常の行為の手順がわからない、日時がわからないなど
  • 中期…今いる場所や親しい人が誰なのかわらないという見当識障害、徘徊など
  • 末期…記憶全般に障害がある、人格の変化、寝たきり、便を触るなど
1-2-1-2.レビー小体型認知症

1996年に診断基準が設けられた新しいタイプの認知症です。原因はレビー小体という異常構造物が脳幹や大脳皮質全体に出現します。認知機能の低下だけでなく幻視(実際にはないものが見える)や運動障害が現れることがあります。

主な症状
  • 初期…うつ・無気力、睡眠障害(夢に反応して叫ぶなど)
  • 中期…幻視(そこにいない人や虫が見えるなど)、人物を認識できず目を合わせられない
  • 末期…四肢(手足)がこわばり転びやすくなる
1-2-1-3.脳血管性認知症

脳の血管障害が原因で起こります。特に脳梗塞が原因で起こることが多いといわれています。

主な症状
  • 初期…歩行障害、集中力が続かない
  • 中期…意欲の低下、不安、うつ、突然泣き出したりする
  • 末期…発音や嚥下(えんげ・飲み込むこと)の障害、失禁など
1-2-1-4.前頭側頭葉変性症

前頭葉(ぜんとうよう)と側頭葉(そくとうよう)の神経細胞が何らかの障害を受けて変性するものです。

主な症状
  • 初期…常同行動(常に同じ場所に座る、同じ料理ばかりを作るなど)、反社会的行動(万引き、無銭飲食、賭博、性的行動)が増える、突然いなくなるなど。これらのことから人格が変わったように見える
  • 中期…言葉数が減り、相手の言葉をオウム返しにする
  • 末期…無言、不潔、筋肉がこわばり運動機能が低下する

1-2-2.老化による物忘れの原因

老化による物忘れの原因は若いころに比べて脳全体が委縮するためですが、病気ではありません。

認知症の脳は特定の部位が委縮してすき間ができて起こります。しかし、老化は脳全体の重量が減り委縮しますが、すき間はできていません。これは誰にでも起こることで、認知症とは異なります。

2.認知症は何科を受診すべき?

認知症は何科を受診すべき?

認知症の初期症状は物忘れだけでなく、うつ状態だったり、食欲不振だったりといった様子が見られます。そのため、家族は「認知症」とは気づかずに「老人性のうつ病かも?」「内臓系の病気で食欲がないのでは?」と思うことがあります。

また、本人にいきなり「それは認知症の症状だから専門の病院に行こう」と言っても、ショックを与えてしまいます。そこでまずはかかりつけ医師を受診することをおすすめします。いつもかかっている内科や循環器科の医師に相談して事情を話してみましょう。その上で専門の病院に紹介状を書いてもらいます。

2-1.認知症の受診科

認知症の疑いがある場合、受診する科は以下の通りです。

  • 脳外科
  • 神経内科
  • 精神科
  • もの忘れ外来
  • 老年病科

など、病院によって設置している診療科が違いますし、認知症の種類によっても検査内容や治療内容が異なります。まずは近くでこれらの科がある病院を探してみましょう。

なお、国ではかかりつけ医が認知症の早期診断や早期対応ができるように「かかりつけ医認知症対応力向上研修」を実施し、平成29年度末までに受講者数を5万人にする計画で取り組みを進めています。今後はますます近くのかかりつけ医での認知症の相談や診断が可能になると思われます。

2-2.認知症が疑われるケース

認知症とそれ以外の病気の判断は素人には難しいものです。そこで認知症が疑われるケースを知っておきましょう。

  • 記憶障害…食べたことを忘れる、過去の出来事を忘れるなど
  • うつ症状…無気力になる、悲観的になる、不眠など
  • 見当識障害…自分のいる場所や帰る家がわからずに迷子になる、季節に合わない洋服を着るなど
  • 異常行動…急に暴力的になる、突然どこかに出かけてしまうなど
  • 幻視…そこにないものが見えるなど
  • 性的な亢進…性的な言動が増える

これらが見られたら認知症の可能性があります。受診する前にその症状がいつから現れたのか説明できるように、家族はメモに書いておきましょう。

3.認知症の診察

認知症の診察

認知症で受診した場合は、本当に認知症なのか、他の病気の可能性がないかを慎重に調べていきます。

3-1.認知症かそうではないかを判断

  • 老化に基づくものかどうか
  • うつ病や精神的な病気による妄想ではないか
  • 内臓系の疾患がないか

これらを問診や患者の容貌や態度などで診断します。容貌や態度からは、例えば視線がうつろではないか、姿勢が左右のどちらかに傾いていないか、小刻みに歩いていないか、暴言を吐いたりしないかなどの態度を見て、どのタイプの認知症か、またほかの病気の可能性がないかを探っていきます。

さらに、簡単な計算や質問に答えたり、時計描写と言って紙に円(丸)を書いてもらいそこに指定した時刻の針を記入する検査をしたりします。

3-2.認知症のタイプを診断

認知症の可能性が高い場合は、さらに詳しく調べて、どの認知症のタイプかを見ていきます。まず、CTやMRIで脳を検査し、脳血管性認知症の場合はその治療を行います。CTなどで脳の血管に障害がない場合はアルツハイマー型認知症などを疑い、さらに検査を進めます。

このようにさまざまな検査を行い、総合的に見て認知症かどうか、そして認知症のタイプを探って治療を進めます。

3-3.認知症で受診する前の準備

認知症で受診する前に家族は次の準備をしておきましょう。

  • 気になる症状は何か
  • その症状はいつごろから出始めたのか
  • その症状は突然現れたのかどうか
  • その症状が進行しているかどうか
  • 認知症以外の健康状態(お薬手帳や健康診断の結果票などがあれば持参する)

これらをメモでいいので書き出していきます。具体的に、どんなときにどんなことを言ったのかを記録しておきましょう。

4.認知症なのに病院に行かないというとき

周囲が見て「認知症」だと思える場合でも、本人は「自分はボケていない」と主張して病院に行こうとしないケースが多く見られます。子どもと違って無理やり連れていくわけにはいきません。その場合の対処法をご紹介します。

4-1.健康診断に行こうと誘う

これが一番本人を説得しやすい方法かも知れません。「保健センターの人が健康診断を受けるようにって案内を持ってきたよ。」と言って、誘ってみましょう。

4-2.親しい人にすすめてもらう

親戚で本人が信頼を寄せている人(兄弟姉妹やいとこ、おじおばなど)や近所の親しい友達などから「私、最近物忘れがひどくて○○病院に行ってきたんだけど、詳しく検査してもらって安心したわ。あなたも一度行ってみたら?この年になるとみんな受けるといいそうだよ」などとすすめてもらいましょう。

4-3.地域の相談窓口で相談する

地元の医療機関の「認知症相談窓口」や「地域包括支援センター」「保健センター」などに事情を伝えて相談してみましょう。地域包括支援センターには社会福祉士や保健師、主任介護支援専門員等がいて、介護予防や虐待防止、医療の向上などのために取り組みをしています。医療機関への橋渡しもしてくれるので、気軽に相談してみましょう。

5.認知症で入院する場合

認知症で入院する場合は、公的介護保険を利用して「認知症療養病棟」に入院する方法と、医療保険を利用して「認知症治療病棟」に入院する方法があります。

5-1.認知症療養病棟

大学病院や一般病院の中の認知症療養病棟や療養施設で、入院するには要介護認定を受ける必要があります。認知症だけで歩行や入浴など身体機能に問題がない場合は要介護認定が受けられないことがありますが、普段の状態をメモして伝えるなどすることで認定が受けられます。

費用は要介護の程度に応じて介護保険から支給され、家族は自己負担分を支払います。

5-2.認知症治療病棟

大学病院や一般病院の中にある認知症の治療病棟に入院して治療を受ける方法です。医療保険の対象ですが、1ヶ月の医療費が多い場合は「高額療養費」の自己負担限度額が設けられています。限度額は所得によって異なりますが、超えた分は戻ってきます。認知症が原因で徘徊や暴力、失禁などの症状がある場合は、入院することで家族の負担が軽くなります。家族だけで悩まずに専門の医療機関や市町村の相談窓口で相談しましょう。

なお、入院に伴う食費や理美容代、紙おむつ代などは自己負担になります。

6.東京都でおすすめの認知症の病院

東京都でおすすめの認知症の病院

最後に東京都内で認知症の専門医がいる病院をご紹介しましょう。

東京都では認知症の人とその家族を支援するために都内の医療機関の中からいくつかの医療機関を「認知症疾患医療センター」として指定しています。2016年6月時点で47ヶ所の医療機関が指定されています。その一部をご紹介します。

地域連携型認知症疾患医療センター(※1)(下記を含めた35施設)
三井記念病院 千代田区
聖路加国際病院 中央区
東京医科大学病院 新宿区
東京女子医科大学附属成人医学センター 渋谷区
武蔵野赤十字病院 武蔵野市
国立精神・神経医療研究センター病院 小平市
東京慈恵会医科大学附属第三病院 狛江市
地域拠点型認知症疾患医療センター(※2)(下記を含めた12施設)
順天堂大学医学部附属順天堂医院 中央区
東京都保健医療公社荏原病院 大田区
東京都健康長寿医療センター 板橋区
杏林大学医学部付属病院 三鷹市
※1: 地域連携型認知症疾患医療センター… 所在する市区町村における認知症医療・介護連携の推進役を担っています。専従相談員による専門医療相談、鑑別診断、身体合併症、行動・心理症状への対応をはじめ、認知症医療や介護連携を勧めたり、区市町村の認知症施策への協力などを行っています。

※2:地域拠点型認知症疾患医療センター…認知症疾患医療・介護連携協議会の開催や地域の医療従事者等向けの研修会開催などを行い、受診困難者等の訪問支援を行う認知症アウトリーチチームを設置しています。

もちろん、ここに紹介した病院以外にも認知症の診察や治療を行っている病院はたくさんあります。まずはかかりつけ医に相談してみましょう。

まとめ

認知症は老化による物忘れとは異なり、脳の機能に障害を起こす病気です。家族が認知症かもと思ったときは、次の点に注意しましょう。

  • 認知症はアルツハイマー型がもっとも多いが、他に脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭葉変性症がある
  • 認知症の症状には体験したことを忘れたり、人の名前を忘れたりといった記憶障害や、帰り道がわからない、徘徊や暴力などの問題行動が見られる
  • 認知症の診察は神経内科、脳神経外科、精神科、もの忘れ内科などを受診する
  • 認知症の可能性があるのに病院に行くのを嫌がる場合は、健康診断だと言って病院に連れて行ったり、親しい人からすすめてもらったりして受診を促す
  • 認知症で受診する際には、気になる症状がいつから出始めたか、症状が進んでいるかどうかをメモしていく
  • 家族だけで悩まずに地域包括支援センターや保健センター、市町村役場などに相談して解決方法を見出すことが大切

認知症はさまざまな問題行動を起こすために、家族はつい隠そうとしがちです。しかし、徘徊や暴力行為などで周囲に迷惑をかける可能性があります。少しでも異変に気づいたら、地域の相談窓口で相談してみましょう。

今は社会でも認知症への理解や関心が進んでいるので、ひとりで悩まないことが大切です。

認知症の症状とその疑いがある親を病院に連れていく方法