家族が認知症になったらどうする?対応方法や利用できる制度を知ろう

家族が認知症になったらどうする?対応方法や利用できる制度を知ろう

65歳以上の高齢者の認知症の人の数は全体の15%近くになると言われています。今後、高齢化が進むとさらに増加すると考えられますが、もし家族が認知症になったらどのように対応すればいいのでしょうか?

家族の接し方や利用できる制度などをご紹介します。

1.認知症のサインを知ろう

認知症は治らない病気と思いがちですが、現在ではさまざまな研究が進んでいます。特に早期に発見すれば認知症の進行を遅らせたり、良好な状態を長く維持できます。そのためにまずは認知症のサインを理解しましょう。

次のような状態が見られたら認知症の疑いの可能性があります。

1-1.同じことを何度も聞いてくる

「それさっきも聞いてきたよ」「さっき答えたでしょ」ということが多くなったり、何度も同じ話をしたりします。

1-2.物の置き忘れが増える

物の置き忘れが増える

メガネ、カバン、新聞などをどこに置いたのかわからなくなり、探し回ります。

1-3.今までできていたことの手順を忘れる

今までは料理ができたのに作り方がわからなくなるなど本人も戸惑うことが増えます。

1-4.ふさぎ込むことが増える

テレビを見ようとしない、世間の話題に無関心になるなどの様子が見られて、ひとりでポツンとすることが多くなります。

1-5.意欲がなくなる

趣味のサークルに行こうとしない、ウォーキングや体操がいいとわかっていてもやろうとしないなどそれまでやっていたことをやろうとしなくなります。

1-6.怒りっぽくなる・疑い深くなる

怒りっぽくなる・疑い深くなる

穏やかだった人が怒りっぽくなったり、やたらと人を疑ったりします。

これらはごく初期の症状です。単なる老化現象のようにも見えるため、「おじいちゃんは年を取って話がしつこくなった」「身体を動かすのがおっくうなんだね」と周囲はあまり深刻に受け止めようとしません。しかし、「もしかしたら認知症かも?」と疑うことが早期発見につながります。

ただし、いきなり「それ、認知症じゃない?」と本人に言ってしまうとプライドを傷つけるので要注意です。それとなく様子を見て、症状が続くかどうかを観察してみましょう。

2.認知症の人に対して家族はどう対応すべきか?

ごく初期の認知症や認知症の疑いがある人の家族は、どう対応すればいいのでしょうか。「公益社団法人認知症の人と家族の会」が発行している『新ぼけの人の生活と対応』では、次の10項目を挙げています。

2-1.初期症状を見逃さないようによく観察しよう

上記に紹介した通り、最初は物忘れが多いとか頑固になったと感じるだけかも知れません。しかし、よく様子を見ていると、ほかにも思い当たることが見つかる可能性があります。それが早期発見につながります。

2-2.早めに受診しよう

早めに受診しよう

認知症のように見えても別の病気の可能性があります。また、認知症には「アルツハイマー型認知症」や「脳梗塞・脳出血などの脳血管障害が原因のタイプ」「レビー小体型認知症」などがあり、それぞれに適した治療法があります。正確に診断するためにも、早めに受診することが大切です。

2-3.家族が認知症のことを知ろう

どの病気でもそうですが治療を続けるには、家族が病気の特徴や治療法、対応法などを知ることが大切です。病院で医師の説明を聞いたり、本を読んだりして認知症の特徴と対応を知るように努めましょう。

2-4.公的なサービスや制度を利用しよう

介護保険や自治体の相談窓口など公的なサービスを利用しましょう。一人で悩んでいると不安でいっぱいになりますが、相談窓口には専門家が在籍しています。利用できる制度や施設を教えてくれますし、家族の対応法のアドバイスも受けられます。

2-5.介護保険サービスの質をよく見極めよう

介護サービスを提供する事業者と本人との相性が悪い場合があります。特に認知症の人への対応は事業者によってさまざまです。認知症のケアは長引くことが多いだけに、家族や本人が満足できるところかどうかをよく見極めるようにしましょう。

2-6.経験者に相談しよう

どの病気でも「患者の会」があり、情報交換をしています。認知症の場合は「認知症の人と家族の会」があります。こちらで各地の支部を探してみましょう。

2-7.残された機能を活かそう

残された機能を活かそう

「認知症になったら何もできなくなり、家族のこともすべて忘れてしまう」というイメージがあるようですが、そんなことはありません。認知症の人にも喜びや悲しみといった感情がありますし、できることがあります。失ったものを嘆くのではなく残された機能を活かして人生を楽しむことが大切です。家族もそれをサポートしてあげましょう。

2-8.認知症を隠さない

近所や周囲には認知症のことを隠そうとしがちです。しかし、徘徊での事故を防ぐためにも隠さずにオープンにすることが大切です。周囲に知らせることで、家族の目が届かないときに声をかけたり、援助したりしてもらえる場合があります。また、アドバイスや協力を得られることが多いので、なるべく隠さないようにしましょう。認知症の人の集まりや相談にも積極的に出かけると、悩みが軽減されて家族の気持ちが明るくなります。

2-9.家族が介護疲れを起こさないようにしよう

認知症の人の介護は大変ですが、家族が犠牲にならないように一人で抱え込まないようにしましょう。「犠牲になっている」という気持ちは無意識のうちに顔や態度に出てしまい、認知症の人は敏感に感じ取ります。介護サービスや施設などを上手に利用して負担を軽減させましょう。

2-10.看取りのことを考えておく

認知症になってもその人らしく人生が終われるように家族で話し合っておきましょう。無理のない範囲で本人が喜んで人生を終えるような暮らしを考えてあげると、家族の心の整理もつきやすくなります。

3.認知症の人の対応法~日常生活での注意点

認知症になっても症状が急激に進行するわけではありません。残された機能をサポートしながら日常生活を過ごせるようにしましょう。具体的には次のような点に注意や工夫をすると本人や家族のストレスが軽減されます。

3-1.着替えの注意点

洋服の前と後ろがわからなくなる場合は、前(胸やズボンのゴムの部分など)に大きな目印をつけてみましょう。また、上下が同じ色の衣類は間違えることがあるので、上着は柄物、ズボンは無地など上下が違うものにするのもおススメです。ファスナーやボタンがうまくはめられない場合はマジックテープに変えてみましょう。

3-2.トイレの場所をわかりやすくする

長く住んでいる家の中でもトイレの場所がわからずに間に合わず失敗することがあります。トイレに近い部屋で寝起きするようにしたり、「トイレはこちら」と矢印を書いた紙を廊下に貼ったりして迷わないようにしてあげましょう。

3-3.迷子にならないために

徘徊などで迷子になってもすぐにどこの誰かわかるように、カバン、衣類、帽子、つえ、靴など身につけるものはすべて名前と住所(または電話番号)を書いておきましょう。GPS機能付きの携帯電話を首にぶらさげておくのもいい方法です。

また厚生労働省では認知症の人に接するときの心構えとして「周囲の人は、認知症になる人は自分が認知症だとは自覚していないと思いがちだが、そうではなく本人が一番不安を感じているのでその不安を理解してあげることが大切」としています。さらに本人は不安を抱えつつも「自分は認知症ではない」と否定したがるものだと紹介しています。認知症は熱が出たら下げるとか悪い箇所を手術で取り除いて治すという類の病気ではないだけに、家族の対応は難しいものです。

本人の意思を尊重しつつ接していきましょう。

4.認知症の人が利用できるサービス

認知症の人が受けられるサービスに介護保険があります。しかし、認知症と診断されただけでは介護保険は利用できません。介護保険のサービスを受けるには、「要介護認定」を受ける必要があります。また、介護保険以外にも障害者手帳の交付や日常生活自立支援事業などがあります。

4-1.介護保険の要介護認定基準

要介護状態や要支援状態と認定されると、それぞれの状態に応じた介護保険サービスが受けられます。認定の目安は次の通りです。

要支援 要支援1 日常生活の基本的な動作はほぼ自分でできるが、家事や買い物などに支援が必要な状態
要支援2 要支援1の状態から少し能力が低下し、支援が必要な状態
要介護 要介護1 歩行や起立が不安定で、入浴や排せつなどに一部または全介助が必要
要介護2 自力での起立や歩行が困難で、入浴や排せつなどに一部または全介助が必要
要介護3 自力での起立や歩行が困難で、入浴や排せつ、衣服の着脱などに全介助が必要
要介護4 介助なしに日常生活を起こることが困難な状態。入浴、排せつ、衣服の着脱などに全介助が必要で食事に一部介助が必要
要介護5 日常生活のほぼすべてにおいて全介助が必要

 ※これはあくまでも目安です。実際の認定には要介護認定等基準時間なども判定されます

4-2.認知症の人が利用できる介護サービス

認知症の人が利用できる介護サービス

認知症の人が要支援状態や要介護状態に認定されたら、ケアマネジャーにケアプランを作成してもらいます。一般的な介護保険サービスは、それぞれの要介護の度合いに応じて受けられますが、特に認知症の人に限定されたサービスとしては認知症対応型共同生活介護(グループホーム)と認知症対応型通所介護があります。

4-2-1.認知症対応型共同生活介護(グループホーム)とは

要支援2と要介護1以上の人が入所できる施設で、1ユニットに最大9人が入所して家庭的な雰囲気の中で生活をします。介護スタッフが食事や入浴、排せつなどの介護や世話を行います。

施設の概要

1事業所あたり1ユニットまたは2ユニットで構成され、1ユニットの定員は5人以上9人以下で共同生活を過ごします。居室は原則個室で、別途食堂や浴室などの共有設備があります。

認知症対応型共同生活介護(グループホーム)の人員配置
  • 介護従事者…利用者3人に対して1人、夜間はユニットごとに1人
  • 計画作成担当者…ユニットごとに1人
  • 監理者…認知症の介護従事経験が3年以上ある人が常勤専従

となっています。

認知症対応型共同生活介護(グループホームの費用)

利用者の負担額は次の通りです。

要支援2の認定を受けた方
サービス費用の設定 利用者負担(1割)
共同生活住居が1つの場合 要支援2 755円/日
共同生活住居が2つ以上の場合 要支援2 743円/日
要介護1~5の認定を受けた方
サービス費用の設定 利用者負担(1割)
共同生活住居が1つの場合 要介護1 759円/日
要介護2 795円/日
要介護3 818円/日
要介護4 835円/日
要介護5 852円/日
共同生活住居が2つ以上の場合 要介護1 747円/日
要介護2 782円/日
要介護3 806円/日
要介護4 822円/日
要介護5 838円/日

出典:厚生労働 介護サービス情報公表システム 認知症対応型共同生活介護

ただし、認知症だからグループホームでなければならないというわけではありません。本人の症状に合ったサービスを選ぶようにしましょう。

4-2-2.認知症対応型通所介護とは

認知症の人がデイサービス施設やグループホーム施設に通って食事や入浴などのサービスを受けます。宿泊はせずに日帰りで利用しますが、施設でスタッフやほかの利用者と関わることで心身の機能の向上や維持が期待できます。また、家族の介護疲れの軽減などの効果があります。

利用者の負担額は次の通りです。

要支援1・2の認定を受けた方
サービス費用の設定 利用者負担(1割)
社会福祉施設等に併設されていない事業所の場合(7時間以上9時間未満) 要支援1 852円/回
要支援2 952円/回
要介護1~5の認定を受けた方
サービス費用の設定 利用者負担(1割)
社会福祉施設等に併設されていない事業所の場合(7時間以上9時間未満) 要介護1 985円/回
要介護2 1,092円/回
要介護3 1,199円/回
要介護4 1,307円/回
要介護5 1,414円/回

出典:厚生労働 介護サービス情報公表システム 認知症対応型通所介護

4-3.日常生活自立支援事業

日常生活自立支援事業は社会福祉協議会が実施しているサービスで、認知症や知的障害がある人が利用できます。サービス内容には次のものがあります。

  1. 福祉サービスの利用援助…どんな福祉サービスが利用できるかのアドバイスと手続きの援助をします。
  2. 日常的金銭管理サービス…預金の払い戻しや年金の受け取り、医療費や公共料金の支払いなどお金の扱いに不安がある場合の金銭管理や支払いをします。
  3. 書類などの預かりサービス…役所に出す書類の書き方を教える、年金証書や契約書などを銀行の貸金庫などを利用して保管するなどを行います。

サービスを利用するにはお住まいの地域の社会福祉協議会に行って相談をします。その後に専門員が調査して状況を確認し、契約してサービスを受けます。

4-4. 障害者手帳の交付

認知症で一定の要件を満たす場合は精神障害者保健福祉手帳が交付されます。障害の等級は1級~3級まであり、日常生活にどの程度支障があるか、記憶障害や注意障害があるかどうかなどで判定されます。市町村の福祉課などが申請窓口になっています。申請には申請書や医師の診断書が必要ですので、詳しくは窓口で聞いてみましょう。

障害者手帳が交付されると所得税や住民税、相続税、贈与税、自動車税(障害者本人または生計を同一にする人あるいは常時介護する人が通院などの利用する自動車1台に限る)が非課税または税額控除になります。また、公共交通機関や携帯電話などの料金が減額されます。交付される条件にはさまざまな要素があるので、自分で判断せずに役所で相談しましょう。

まとめ

認知症は誰にでも起こり得る病気で、しかも完全に元の状態に戻るのは難しいのが特徴です。ただ、早期発見や早期治療で病状の進行を遅らせたり、日常生活に支障のない程度に病状を維持したりすることが可能です。

認知症の人への対応法を理解しておきましょう。

  • 認知症は日常生活の小さな変化で早期発見が可能。「老化現象」と思い込まずによく観察することが大切である
  • 認知症になった場合でも衣類やトイレに目印をつけるなどの工夫で、日常生活の失敗を防ぐことができる
  • 徘徊に備えて近所や周囲には隠さずに伝えておくことが大切。持ち物や衣類には名前と連絡先を書いておこう
  • 認知症で介護が必要な状態になったら介護認定を受けることでさまざまなサービスが受けられる
  • 介護保険以外にも福祉のサービスなどが受けられるので役所の福祉課などで相談してみよう

また、認知症は自分たちだけで悩まずに家族の会など同じ病気を持つ人と積極的に交流することで気持ちが軽くなりますし、新しい情報を得ることができます。上手に利用していきましょう。

家族が認知症になったらどうする?対応方法や利用できる制度を知ろう