認知症の症状別介護のポイントと介護サービスの活用法

認知症の症状別介護のポイントと介護サービスの活用法

認知症患者は本人もつらいですが、家族の負担や抱えるストレスは相当なもの。仕事を持ちながらの介護をどうすればいいのか、本人が少しでも快適に暮らす方法とは…など認知症家族の介護について症状別のお役立ち情報をまとめました。

1.認知症家族の介護の悩みと負担

認知症の症状が進行するかどうかは周囲の人の対応や介護の仕方に影響されると言われています。そうは言っても毎日のことだけに家族の抱える負担や悩みは大きいものがあります。まずは認知症患者を介護する家族の負担や悩みを見てみましょう。

1-1.認知症の家族が抱える介護の悩み

認知症の家族が抱える介護の悩み

認知症の症状はさまざまで、それに対する介護の悩みも百人百様です。

大きく分けると

  1. 認知症患者への接し方がわからない
  2. どんなサービスが利用できるのかわからない
  3. 施設を利用したいが本人や家族が抵抗を感じるなど施設に関する悩み

に分かれます。1つずつ見ていきましょう。

1-1-1.認知症患者への接し方

認知症患者の家族は、介護の知識がないのにいきなり認知症の患者を見なければならないため、どう接していいのかわからずに戸惑うケースが多く見られます。

公益社団法人「認知症の人と家族の会」によると、

  • お金を盗ったと言い張って家族を疑われて困る
  • 認知症なのに車の運転をやりたがる
  • 火元が危ないのに料理をしようとする
  • 義母の介護を男の自分がする場合、対応に困る
  • 入浴を嫌がる

などの声が寄せられています。こういった場合は叱っていいのかどうか、危険なことは強引にでも禁止すべきかどうなのかがわからずに悩んでしまいます。

1-1-2.介護サービスの利用方法

ケアマネジャーをどこで探せばいいのかわからない、介護の苦労を相談する相手がいなくてつらいといった悩みがあります。

1-1-3.介護施設の利用

認知症で要介護と認定されればさまざまなサービスや施設が利用できます。

しかし、本人が施設を嫌がるというケースや親戚が施設に入れるのを反対するといったケースが多くあります。その結果、家族に負担がかかり、介護する側が体調を崩したり、精神的に参ったりしてしまいます。

1-2.深刻な老老介護

深刻な老老介護

厚生労働省が実施した国民生活基礎調査(平成25年)で誰が家族の介護をしているかを調べたところ、同居の家族が61.6%、事業者が14.8%、別居の家族が9.6%となっています厚生労働省 国民生活基礎調査 平成25年)。

要介護者等との続柄別にみた主な介護者の構成割合

また同居の家族の中では配偶者が26.2%と高く、次いで子どもが21.8%となっています。男女別で見てみると、女性が介護を担っている割合が70%近くに上ります。注目したいのは介護する人の年齢で、男女ともに60歳以上が半数以上を占めています。60歳を過ぎた人が高齢者を介護するという老老介護の実態が見えてきます。

性・年齢階級別にみた同居の主な介護者の構成割合

この調査の要介護者は必ずしも認知症患者だけではなく身体的な介護を要するケースもありますが、このような老老介護は深刻で高齢の夫婦が介護で思い悩んで配偶者(または親・子)を殺害してしまうという事件が多発しています。

1-3.仕事と介護の両立

仕事と介護の両立

総務省が平成24年に実施した就業構造基本調査によると、家族の介護が理由で離職した人の数は113,100人になっています。家族の介護をする介護休業が取得できるのですが、労働者で介護休業を利用したことがあるのは379,800人で全体の約13%です。

介護休業を利用しない理由としては「介護休業の取得を理由に人事異動を命じられるのではないか」「介護休業の期間終了後に職場に戻ったら仕事がないかも知れない(自分の居場所がないかも知れない)」といった不安があると考えられます。

しかし、会社側が介護休業の取得を理由に不利益な扱いをすることは育児・介護休業法で禁じられています。安心して取得してください。

2.認知症の症状別の介護のポイント

認知症の症状別の介護のポイント

認知症患者の介護といっても、症状や病気の進行度合いによって異なります。認知症の初期、中期、重度に分けて見てみましょう。

2-1.初期

初期の段階では周囲が早くに認知症に気づくことと適切な対処をすることで進行を遅らせることができます。特に初期の場合は脳の機能の一部が低下しているだけで、本人は周囲の人が話している内容がよくわかっています。

  • 「おじいさん、最近ボケたみたい。認知症じゃないかしら」
  • 「またトイレを失敗したの!?」

などと不用意に話すと本人のプライドを傷つけることになるので注意しましょう。

【認知症を進行させないための日常生活の注意点】

  • 規則正しい生活を過ごす
  • バランスのよい食事や適度な運動を心がける
  • 残っている機能を活かしてできることを手伝ってもらう
  • できないことや失敗があっても叱らない
  • 早めに専門医を受診する

家族はこの点に配慮してあげましょう。

2-2.中度

認知症には中核症状と周辺症状があります。

中核症状は物忘れや判断力の低下、見当識障害(時間や場所がわからなくなること)などを指します。一方、周辺症状は「BPSD」と呼ばれるもので、認知症が進行して中度になるとうつ、幻覚、不安、徘徊、介護への抵抗などが見られます。認知症の介護現場ではこの「BPSD」の症状に合わせた対処法を取るようにしています。

「BPSD」は人によって現れ方が異なりますが、本人に言って聞かせてもわからないために介護をする人が参ってしまうケースが多く見られます。その場合はデイサービスやショートステイなどの介護サービスを利用することで家族の負担が軽減できます。

なお、「BPSD」は昔の写真を見せたり、若いころの本人の活躍をほめたりすることで改善されるケースもあります。医師や介護スタッフと相談しながら接してみましょう。

2-3.重度

認知症が重度になると、認知機能がさらに低下してきます。そのために、

  • 食べ物ではないものを食べようとする
  • 便を触ったり、こすりつけたりする
  • 会話が成立しなくなる

といった症状が現れます。

また、運動機能が低下するため、

  • 歩行が困難になる
  • トイレに行けない
  • 嚥下(えんげ)障害(食べ物を飲み込めなくなる)

などの症状も出てきます。

中度の頃に見られた徘徊や暴力などは減少するものの、何をするにも介助が必要になります。介護をする人は体力的にも大変になるので、適切な介護サービスを受けて患者本人の身体的な安全を図るとともに介護する人の負担を軽くすることが大切です。

3.認知症の人が介護サービスを受けるには

認知症の人が介護サービスを受けるには、要介護認定を受ける必要があります。介護サービスを利用するまでの流れは以下のようになっています。

  1. 家族が市町村に要介護認定の申請を行う
  2. 市町村は訪問調査員を派遣し調査を行う(「市町村が主治医(または市町村の指定医)に「主治医意見書」を依頼する」→「コンピューターによる一次判定」→「介護認定審査会による二次判定」という流れ)
  3. 申請から30日以内に要支援・要介護の認定を行い通知する
  4. 介護(または介護予防)サービス計画書を作成する(作成はケアマネージャーに依頼)
  5. 介護サービス計画に沿ってサービスを利用する

3-1.認知症患者の要介護判定の目安

要介護認定は日常生活の次の状態を目安に判定されます。

要支援 要支援1 日常生活にほぼ支障はないが、一部支援が必要な状態
要支援2 歩行などに不安があり、入浴などに一部支援が必要な状態
要介護 要介護1 立ち上がりや歩行が不安定で、入浴や排せつなどに一部または全てに介助が必要
要介護2 自分で立ち上がりや歩行が困難で、入浴や排せつなどに部分的な介助または全介助が必要
要介護3 自分で立ち上がりや歩行が困難で、入浴や排せつなど生活全般に介助が必要
要介護4 寝たきりに近く、排せつや入浴、衣類の着脱など生活全般に全介助が必要
要介護5 日常生活全般に介助が必要で、意思の伝達も困難な状態

これらの状態が見られたら要介護申請をしてみましょう。

4.認知症の介護施設

認知症の介護施設

介護サービスにはさまざまな種類がありますが、特に認知症の人のために作られた施設にグループホームがあります。

これは認知症対応型共同生活介護と呼ばれるもので、アットホームな雰囲気の施設で共同生活を送ります。居室は基本的に個室で要支援2から要介護5の人までが利用できます。日中は入居者の3人に1人の割合(夜間はユニットに1人)で介護スタッフが配置されているので安心して任せられます。

4-1.認知症の介護施設の選び方

認知症の人はグループホーム以外の施設も利用できます。それぞれの施設の特徴と利用者の傾向をご紹介します。

施設 施設の特徴 利用者の傾向
グループホーム 認知症の人だけが利用できる 重い認知症の人でも利用が可能
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム) 入浴・食事・排せつなどの介護、日常生活上の世話、機能訓練などが受けられる 常時介護が必要で在宅での介護が難しい人におススメだが、どの施設も定員がいっぱいで待機高齢者が多い
介護老人保健施設 リハビリをして自宅に戻るのが目的で3ヶ月ごとに入所を継続するか判定が行われる
  • 機能訓練を受けて在宅での生活を目指す人向け
  • 最近は認知症の人の利用が増えている
介護療養型医療施設 医療と介護の両方が受けられる施設 長期間療養が必要な人が利用する施設で認知症の人も多いが、2012年からは新設が認められていないため入所待ちが多く利用は難しい
小規模多機能型居宅施設 利用者のニーズに合わせて通所・宿泊、訪問のサービスを組み合わせて利用できる 事前に事業所に登録しておけば体調がいいときは通所で、体調が悪いときは訪問介護で、家族が留守になるときは宿泊でと自由に選べるため、在宅介護が中心の人が多い
サービス付き高齢者向け住宅 バリアフリー化された施設で安否確認と生活相談が受けられる デイサービスや訪問介護サービスを利用するが、中度~重度の認知症の人が生活するのは困難なので軽度の人向け
介護付き有料老人ホーム 施設内で入浴や食事などの介護が受けられるところと外部の介護サービスを受けるところがある 介護サービスは介護保険で受けられるが入居に関して一時金が必要になるところが多いため、ある程度の資金を持つ人向け
ケアハウス 自治体が運営するものが多い
  • 身寄りがいない、経済的な理由など事情がある人が優先的に利用できる。
  • 利用に際しては自治体の審査がある

これらの施設では利用に関してそれぞれに条件が設けられています。どの施設を利用するのがいいかはケアマネジャーや自治体の相談窓口で相談してみましょう。

5.認知症の介護はプロの力を借りよう

認知症の介護はプロの力を借りよう

認知症患者の介護は家族にとって精神的にも体力的にも負担が大きくなります。何もかも自分たちだけでやろうとせずに、介護保険を使ってプロの力を借りるようにしましょう。介護従事者は認知症介護実践者研修や認知症介護実践リーダー研修などを受けています。認知症の介護に関する知識や技能を持っているので、安心して相談できます。

5-1. 認知症介護実践者研修とは

認知症介護実践者研修は毎年都道府県や市町村が実施しているもので、認知症患者本人やその家族の生活の質を向上させるための技術や対応を修得することを目的にしています。

受講資格(東京都の場合)は、

  • 東京都内の介護保険施設・事業所(居宅介護支援事業所を除く)に従事している介護職員であること
  • 認知症介護に関して、介護福祉士と同等の知識を習得していること
  • 認知症高齢者の介護に関する経験が2年以上あること
  • 施設・事業所で介護・看護のチームリーダーの立場にあるか、将来そうなることが予定されていること

のすべてを満たすこととなっています(受講資格は自治体によって若干異なります)。研修内容は講義や演習が6日間、自施設での実習が2週間となっています。

4-2.認知症介護実践リーダー研修

認知症介護実践リーダー研修は介護保険施設・事業所だけでなく地域の中でも事業者間の連携の中心としてリーダーシップを発揮して認知症支援を実践する人材を育成するのが目的で実施されています。

受講資格(東京都の場合)は、

  • 東京都内の介護保険施設・事業所(居宅介護支援事業所を除く)に従事している介護職員であること
  • 認知症介護実践者研修を修了して1年以上経過していること
  • 認知症高齢者の介護に関する経験が5年以上あること
  • 各施設・事業所で介護・看護のチームリーダーの立場にあるか、またはそれらの人を指導する立場にある人
  • 市区町村または地域において認知症高齢者ネットワーク作りや支援者の人材育成の役割を持っているまたは意欲を持っている人

のすべてを満たすこととなっています(受講資格は自治体によって若干異なります)。研修内容は講義・演習が8日間、他施設での実習が5日間、自施設での実習が4週間です。

このように介護従事者の中でも特に認知症に特化した研修を実施しています。わからないことや不安になることがあれば遠慮なく聞いてみましょう。

6.認知症介護体験のブログや書籍も参考に

認知症介護体験のブログや書籍も参考に

認知症の介護をしていると患者と自分だけの世界に閉じこもりになりがちです。そうなると余計に不安が募って、気持ちが暗くなってしまいます。そんなときは同じ病気を持つ人の体験談が参考になります。「認知症の人と家族の会」の集まりに参加すると、ほかの人の体験を聞くことができます。

出かけるのが難しい場合は認知症の介護体験をつづったブログや本を読んでみましょう。ブログはインターネットで「認知症介護 ブログ」などで検索すれば見つかります。

体験記を描いた本には次のものがあります。

『娘になった妻、のぶ代へ 大山のぶ代「認知症」介護日記』(砂川啓介・著/双葉社)

ドラえもんの声を担当されていた声優の大山のぶ代さんが認知症になり、介護をするご主人の砂川啓介さんの体験談です。

『ペコロスの母に会いに行く』(岡野雄一・著/西日本出版社)

62歳の漫画家が認知症になった母との暮らしを描いたもので映画にもなりました。

こういった体験談を読むと、認知症の介護や接し方がわかるだけでなく、「自分だけじゃないんだ」と気持ちが軽くなるのでおススメです。

まとめ

認知症の介護は戸惑うことが多く、気持ちが沈みがちです。しかし、医療機関や介護保険、介護休業など利用できる制度がたくさんあります。認知症介護のポイントを理解して、使える制度は積極的に活用しましょう。

  • 認知症の介護は接し方、制度の利用方法、本人や家族の抵抗などさまざまな悩みや問題が発生することが多い
  • 家族の介護を理由に離職するケースがあるが、介護休業を利用すれば仕事を辞めずに介護に取り組める
  • 認知症の介護は症状の段階に応じて対応を取ることが大切で、初期の場合は日常生活の見直しやリハビリで進行を遅らせることができる
  • 中度や重度の認知症になると、家族だけでの介護は難しくなるので医療や介護の専門ケアを受けることが大切
  • ひとりで悩まずに「認知症の人と家族の会」を利用したり、認知症介護体験のブログや本を読んだりすると参考になる

認知症はまだ完治する治療法が確立されていませんが、自治体や介護施設、医療機関などの相談窓口がたくさんあります。まずは自治体や近くのかかりつけ医で相談してみましょう。

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