民間の介護保険って必要?公的介護保険との違いを詳しく解説

民間の介護保険って必要?公的介護保険との違いを詳しく解説

超高齢化社会といわれる現代、「自分も介護を受ける身になったらどうしよう」という不安がありますね。そこで気になるのが「民間の介護保険」です。公的な介護保険だけでは足りないのでしょうか?公的介護保険と民間の介護保険の違いを詳しく解説します。

1.要介護認定者の数はどんどん増えている

要介護認定者の数はどんどん増えている

「超高齢化社会」と呼ばれていますが、実際どれくらいの人が介護を必要としているのでしょうか。

下記のグラフは厚生労働省が発表している「介護保険事業状況報告(平成25年度)」の結果です。これによると、平成25年度の要介護認定者数は583万8000人で過去最高になっています。公的介護保険制度がスタートした2000年(平成12年度)の256万2000人と比べると約2倍以上になっています。
介護保険事業状況報告(平成25年度)

出典:厚生労働省「介護保険事業状況報告(年報)」/平成25年度

2.介護にかかる費用

介護にかかる費用

では、実際に介護が必要な状態になったとき、どれくらいの費用がかかるのでしょうか。そして、公的な介護保険だけでは足りないのでしょうか。

まずは、公的介護保険を利用した場合の費用を見てみましょう。

2-1.公的介護保険で支給されるお金

公的介護保険制度には、

  1. 介護給付
  2. 予防給付
  3. 市町村特別給付

がありますが、ここでは民間の介護保険との違いを知るために、1.の「介護給付」の内容とそれにかかる費用について見ていきます。

2-2.介護給付の内容

介護給付には、次のような内容があります。

居宅介護サービス(自宅に住みながら受けるサービス) 居宅介護サービス費
  • 訪問介護
  • 訪問入浴介護
  • 訪問リハビリ介護
  • 居宅療養管理指導
  • 通所介護(デイサービス)
  • 通所リハビリテーション(デイケア)
  • 短期入所生活介護(ショートステイ))
  • 短期入所療養施設
  • 福祉用具貸与
地域密着型介護サービス費
  • 定期巡回
  • 随時対応型訪問介護看護
  • 夜間対応型訪問介護
  • 認知症対応型通所介護

など

その他
  • 居宅介護福祉用具購入費
  • 居宅介護住宅改修費

など

施設に入所して受けるサービス 施設介護サービス費
  • 介護老人保健施設
  • 介護老人福祉施設
  • 介護療養型医療施設

これらのサービスを受ける場合の費用は、要介護(要支援)の程度によって支給限度額が決められています(限度額などは今後見直しや改正の可能性があります)。

利用できるサービスの単位 支給限度額
要支援1 5,003単位 50,030円
要支援2 10,473単位 104,730円
要介護1 16,692単位 166,920円
要介護2 19,616単位 196,160円
要介護3 26,931単位 269,310円
要介護4 30,806単位 308,060円
要介護5 36,065単位 350,650円

※基本的に1単位=10円ですが、実際は地域単位をかけて計算されます。

それぞれの段階において、支給限度額の9割までが支給されます。残りの1割と支給限度額を超えた分が自己負担になります。

また、福祉用具の購入に対しては10万円が、住宅改修費は20万円が支給の上限になっています。その9割までが公的介護保険で支給されるので、自己負担は1割と支給限度額を超えた分です。

2-3.公的介護保険は現物支給

公的介護保険は金額を受け取るのではなく、実際にかかった費用の9割(所得が多い人は8割)を公的介護保険から支給される「現物支給」になります。残りの1割(所得が多い人は2割)が自己負担になります。

なお、施設に入所したときの食事代、居住費、日常生活費(理美容代や日用品代など)は全額自己負担です。

2-3-1.公的介護保険の自己負担額

では、実際の計算例を見てみましょう。

67歳男性が要介護3に認定された場合の計算例です。自宅で介護をすることになりました(自己負担割合は1割です)。

【初期費用】

自宅で介護をするにあたって段差をなくす工事をし、介護ベッドや車いすなどを購入しました。

内容 実費 公的介護保険の上限 公的介護保険からの支給額 自己負担額
住宅の改修 20万円 20万円 18万円 2万円
車いすの購入 3万円 合計16万円 10万円 9万円 7万円
ポータブルトイレの購入 3 万円
介護ベッドの購入 10万円

上図より、自己負担額は住宅改修費の2万円+福祉用具購入の7万円=9万円になります(A)。

【毎月の介護費用】

毎月の介護としては、訪問介護(30分以上1時間未満のサービス)を12回/月、訪問入浴サービスを12回/月、通所介護(デイサービス)(5時間未満)を12回/月、訪問看護(30分以上60分未満)を月5回、ショートステイを月3回利用することになりました。

それぞれの費用は以下の通りです。

内容 単価 回数 費用
訪問介護(30分以上1時間未満) 3,880円 12回 46,560円
訪問入浴サービス 12,340円 12回 98,720円
通所介護(デイサービス)(5時間未満) 5,280円 12回 63,360円
訪問看護(30分以上60分未満) 8,300円 5回 41,500円
ショートステイ(単独型施設でユニット型個室の場合) 8,820円 3日 26,460円
合計 276,600円

※費用は施設によって異なります

1ヶ月に介護サービスを受ける費用として276,600円かかることになりますが、要介護3の人の公的介護保険の支給限度額は269,310円なので、その9割にあたる242,379円は公的介護保険から支給されます。残りの1割の26,931円(B)と支給限度額を超えた276,600円-269,310=7,290円(C)が自己負担になります。

別途、実費で負担するものとしてデイサービスの食事代(1回620円×12回=7,440円)+ショートステイの食事代(1,380円×3=4,140円)+ショートステイの居住費(1日1,640円×3日=4,920円)の合計16,500 円(D)がかかります。

これらを合計すると、毎月の自己負担額は(B)+(C)+(D)なので、【26,931円+7,290円+16,500円=50,721円】がかかることになります。

それと最初だけ初期費用(A)の9万円が必要になります。

なお、同じ要介護3でも受けるサービス内容が異なると当然費用も違ってきます。また、要介護1の人や要介護5の人では受けるサービスや費用に違いがあります。それぞれのケースでケアマネージャーと相談してどのようなサービスを受けるか決めていきます。

3.民間の介護保険の特徴

民間の介護保険の特徴

公的介護保険では実際にかかった費用のうち、要介護の程度に応じて支給限度額の範囲内で9割までが支給される「現物支給」ですが、民間の介護保険は所定の介護状態になれば利用したサービスに関係なく契約した通りの保険金を受け取ることができます。

現金で受け取れるのが民間の介護保険の大きな特徴です。

3-1.民間の介護保険の受給要件

民間の介護保険の受給要件は保険会社によって多少の違いはありますが、多くは次のような条件を設定しています。

  • A:公的介護保険制度の要介護2~5と認定された場合
  • B:保険会社所定の要介護状態になった場合

Bの保険会社所定の要介護状態とは、下の(1)または(2)に該当して、その状態が180日継続することをいいます。

(1)常時寝たきり状態で下表の(a)に該当し、かつ下表(b)~(e)のうち2項目以上に該当して他人の介護を要する状態

  • (a)ベッド周辺の歩行が自分ではできない
  • (b)衣類の着脱が自分ではできない
  • (c)入浴が自分ではできない
  • (d)食物の摂取が自分ではできない
  • (e)大小便の排泄後の拭き取り始末が自分ではできない

(2)器質性認知症と診断確定され、意識障害のない状態において見当識障害があり、かつ他人の介護を要する状態

器質的認知症とは、

  • アルツハイマー病の認知症
  • 血管性認知症
  • 他に分類されるその他の疾病の認知症
  • 詳細不明の認知症

をいいます。

見当識障害とは、次のいずれかに該当する場合をいいます。

  • 時間の見当識障害…季節または朝・真昼・夜のいずれかの認識ができない
  • 場所の見当識障害…今住んでいる自分の家または今いる場所の認識ができない
  • 人物の見当識障害…日ごろ接している周囲の人の認識ができない

なお、保険会社によっては所定の要介護状態が3ヶ月以上継続すれば支給されるというところもあります。

3-2.民間の介護保険の保障内容と保険料

民間の介護保険は介護サービス(現物支給)ではなく保険金として支給されます。その内容と保険料を各社の商品ごとに見てみましょう(いずれも30歳男性、月払いの例)。

保障内容 払込期間 保障期間 保険料
日本生命

  • みらいのカタチ 介護保障保険
一時金:1,000万円 (有期型)

30歳~60歳

60歳まで 30歳~44歳:3,050円

45歳~60歳:7,300円

(終身型)

30歳~60歳

一生涯 24,990円
住友生命

  • Wステージ 未来デザイン1UP
  1. 主契約:死亡保障120万円(うち就労不能・介護特約:一時金100万円)
  2. 年金:180万円
  3. 入院給付(1日1万円)やがん診断給付金など
30歳~65歳
  1.  は一生涯
  2. は64歳まで
  3. は80歳まで
21,145円
アフラック

  • スーパー介護年金プラン
一時金:60万円

介護年金:60万円×10年間

一生涯 一生涯 3,066円
メットライフ生命

  • 日常生活動作障害保障保険ロングタームケア
一時金50万円

年金年額:50万円

65歳 一生涯 6,975円

このように保険会社によって保障内容も保険料も大きく異なります。それぞれの特徴を簡単に整理すると、次のようになります。

3-2-1.日本生命

入院給付などの特約はなく、要介護状態になったときの一時金だけです(年金として受け取ることも可能)。また、有期型は払込満了と同時に保障が終わってしまいます。

3-2-2.住友生命

給付の要件が公的介護保険の要介護2以上だけでなく公的年金制度の障害年金1・2級に認定されたときも対象になります。また同社独自に設けた「就労不能」の状態になったときも支給の対象になります。

ただし、これらは「特約」なので、別に主契約(死亡保障)に加入しなければなりません。また、仕組みが複雑でわかりにくいのが難点です。

3-2-3.アフラック

保険料は安いのですが、一生払い続ける必要があります。ただし、要介護や高度障害の状態になったら以後の保険料の払い込みは免除されます。

また、65歳の時点でそれ以降の受け取りを、

  • 同社の所定の要介護状態になったときに受け取る方法
  • 公的介護保険認定を受けたときに保障を受け取る方法
  • 要介護状態にならなくても確定年金として受け取る方法
  • 解約返戻金を一時金として受け取る方法

の中から選べます。これはもし要介護状態にならずに長生きすると「保険料は払うけれど受け取れない」ということがあるためで、それを避けるために設けられています。

3-2-4.メットライフ生命

アフラックよりも保険料は高いですが、払い込みは65歳までで保障は一生涯続きます。また、65歳以降で要介護状態にならずに生存していたら70歳から5年ごとに「生存祝金」が50万円受け取れます。申し込みはネットではなく対面になります。

 他には保険料が安い介護保険として「コープ介護保険」がありますが、取り扱いをしていないコープがあるため、誰もが利用できるというわけではありません。そのため、ここでは紹介を省きました。

4.公的介護保険と民間介護保険の違い

公的介護保険と民間介護保険の違い

ここで公的介護保険と民間の介護保険の違いを整理しておきましょう。

公的介護保険 民間介護保険
給付内容 現物支給(介護サービスを受けた内容に応じて支給限度額の9割までを支給) 受ける介護サービスの内容にかかわらず現金(一時金または年金)を支給
給付開始年齢 65歳以上(40歳~65歳未満は厚生労働省が定めた特定疾病で要介護状態になったとき) 保険に加入したときから保障が開始される
保障期間 要介護状態が続く限り一生 保険によって異なる(65歳で終了するものがあるので要注意)
保険料 40歳以降は健康保険料に上乗せして(65歳以上は年金に上乗せ)徴収される 保険会社、年齢、保障内容によって異なるが比較的高い
給付対象となる要介護状態 要支援・要介護認定を受けた場合 公的介護保険の要介護2以上または保険会社が定める所定の要介護状態が一定期間続いた場合

このように公的な介護保険は40歳からが対象ですが、民間の介護保険は加入したときから保障が始まります。また、現金で支給されるので使い道が自由であるのが大きなメリットです。介護サービスや介護に必要なものを購入する費用だけでなく生活費に充てることができます。

一方、民間の介護保険は保険料が比較的高いという特徴があります。それだけ高い保険料を払っていても、要介護状態にならなければ戻ってきません。

5.結論!民間の介護保険は必要か?

「2-3-1.公的介護保険の自己負担額」でもご説明した通り、公的介護年金を利用した場合の自己負担額は毎月5~6万円程度です。もちろん要介護の程度や家族の状況などにもよりますが、もし自己負担額が高額になった場合は「高額介護サービス費」の払い戻しを受けることができます。

下記の表のように、それぞれの所得区分で上限額を超えた部分は「高額介護サービス費」として戻ってきます。そのため莫大な介護費用がかかるという心配は少ないといえます。

所得区分 上限額
(1)同一世帯内に65歳以上で課税所得が145万円超の人がいる 世帯で44,400円
(2)一般の所得者(1)、(3)~(6)に該当しない人 世帯で37,200円
(3)課税年金年収が80万円超266万円未満 世帯で24,600円
(4)課税年金収入と所得金額の合計が80万円以下 個人で15,000円
(5)市町村民税非課税世帯の老齢福祉年金受給者
(6)生活保護受給者など

5-1.要介護状態になる確率は17.8%

厚生労働省が平成25年に行った調査によると、65歳以上の人3201万8000人のうち、要支援と要介護の認定を受けた人の数は5691万人で、その割合は全国平均で17.8%でした。つまり高齢になっても要介護(要支援を含む)の認定を受けるのは2割以下ということになります。

2割というと10人中2人なので高い確率と思えるかも知れませんが、公的介護保険でかなりの部分がカバーされるようになっています。また、公的介護保険制度は今までに何度も改正されて使いやすくなっていますし、これからも見直しがあると考えられます。

そのため、介護にしか使えない民間の介護保険に高い保険料を払うよりは、もっと幅広く使える医療保険や貯蓄で備えておくのが得策だといえます。

まとめ

将来、自分に介護が必要になったときに備えて、公的介護保険と民間の介護保険の違いを理解しておきましょう。

  • 公的介護保険は要介護の程度に応じて支給される金額の上限が決められている
  • 公的介護保険は支給限度額の9割までが支給されるので、自己負担額は支給限度額の1割と限度額を超えた分である
  • 民間の生命保険は保険会社によって条件や保障内容が異なるが、決められた額を現金で受け取れる
  • 民間の介護保険は保険料が比較的高い
  • 民間の介護保険は保険会社によって保障は65歳で終わるものがあるので要注意

これらのことを考え合わせると、保険料が高い民間の介護保険に加入するよりも貯蓄で介護にも対応できるようにしておくのがいいでしょう。

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