介護相談員とは?なり方、仕事内容とのってくれる相談内容とは?

介護相談員とは?仕事内容とのってくれる相談内容とは?

介護サービスの利用者やその家族にとって介護の現場では戸惑うことが多くあります。特に介護事業所や介護職員に対しての不満や苦情などがある場合、「お世話をしてもらう立場だから」と遠慮しがちです。そんな場面で相談できるのが介護相談員です。

ここでは介護相談員についてくわしく解説していきます。

1.介護相談員とは

介護相談員とは

介護相談員とは利用者の立場に立って介護サービスの不満や苦情などを聞き取り、サービスを提供している事業所や自治体に伝えて問題解決に向けて取り組む橋渡し的な役割を担っています。特に専門の資格や試験があるわけではなく、「介護相談・地域づくり連絡会」が行う養成研修を修了した人が登録され、市町村から事業所に派遣されます。

1-2.介護相談員の養成研修

介護相談員になるには、「介護相談・地域づくり連絡会」が実施する養成研修を受ける必要があります。養成研修は前期研修(4日間)、フィールドワーク(1日)、後期研修(1日)があり、修了証を受けて相談員としての活動ができます。養成研修の費用は54,000円(テキスト代、消費税込み)が必要です。

養成研修の内容(2016年)

  日程 研修内容
前期研修 1日目
  • 介護相談員の意義と役割
  • 介護保険制度
2日目
  • 施設の居住環境とケアの質
  • 個室・ユニットケアとは
  • 居宅サービスの理解
  • 利用者の権利擁護
  • 高齢者の理解
  • 虐待への対応
3日目
  • 身体拘束への対応
  • 認知症の人といかに向き合うか
  • 認知症の正しい理解
  • コミュニケーション技法とトレーニング
  • 記録・報告の意義
4日目
  • 相談活動から記録・報告まで
  • 施設訪問
前期研修修了後1ヶ月以内 フィールドワーク
  • 介護施設訪問実習
後期研修 フォローアップ
  • オリエンテーション
  • フィールドワーク活動報告と検討
  • 修了証授与

2.介護相談員派遣事業とは

介護相談員は事業所に就職して働くのではなく、市町村から委託を受けて活動を行います。介護相談員の登録や派遣を行う事業のことを介護相談員派遣事業といい、2000年の介護保険制度開始と同時にスタートしました。

介護相談員派遣事業の目的は利用者から苦情が寄せられる前に状況を把握して、苦情に至る事態を未然に防ぐことや介護の質の向上です。そのために市町村では利用者の話を聞いたり、相談に応じたりする介護相談員を選定して登録し、必要に応じて施設に派遣します。

介護相談員として登録されるのは、養成研修を受けた人で事業活動の実施にふさわしい人格と熱意を持つ人が対象となっています。

3.介護相談員の仕事内容

介護相談員は1~2週間に1度程度の割合で施設を訪問し利用者の相談に乗るほか、

  • 施設などの行事に参加する
  • サービスの現状把握に努める
  • 事業所の管理者や従業員と意見交換する

などの活動を行います。

利用者の不満や悩みを聞き出して事業所にフィードバックするほか、施設を訪問して気になったことなどもサービス改善案として提言します。年に1回、「介護相談員だより」を発行している市町村もあります。

3-1.介護相談の成果

「老人保健健康推進等事業による介護相談員活動調査報告書(2014年介護相談・地域づくり連絡会)」によると、利用者からは要望や意見が出るようになり、事業者からは「介護ケアの質が改善・向上した」という声が寄せられています。具体的な改善例や利用者の変化などには次のようなものがあります。

3-1-1.利用者の変化

  • 介護相談員に話すことで利用者が精神的に安定し、訪問を楽しみに待つようになった
  • 介護相談員が会話を通して利用者の小さな不安や悩みを察して聞き取ってくれるので、不安が大きくなる前に対処できるようになった
  • 介護相談員は施設の職員ではないので、介護職員には言えない悩みを話せる。それがサービスの質の向上につながっている

3-1-2.介護ケアの向上や改善

  • リハビリを希望する利用者の声をくみあげて、日常の動作の中にリハビリの要素を入れることができた
  • 経口摂取(口から食事が取れない)の利用者の「自分の口で食べたい」という希望を介護相談員に伝えたことで、介護スタッフと看護スタッフが協力して経口摂取に取り組み、3食を口から食べられるようになった
  • ミキサー食しか食べられなかった利用者が介護相談員のアドバイスで義歯をつくり、普通食が食べられるようになった
  • 夜間巡回で目をつぶっていると寝ていると思い、体位変換やオムツ交換をしてくれないが、寝ていてもオムツは変えてほしいと介護相談員に伝えたところ、改善された

3-1-3.身体拘束の改善

  • 利用者をベルトなどで身体拘束するケースがあったが、介護相談員の指摘で改善された

3-1-4.他施設や地域の取り組みの紹介

  • 介護相談員が他施設や地域の取り組みを紹介することで、事業所の介護職員はさまざまなレクリエーションやケアの方法を知ることができた

また、中には「職員が廊下で立ち話をしているが、自分の悪口を言われているのではないかと不安になる」といった利用者からの相談があり介護相談員が事業所側に伝えたところ、以後は職員の立ち話が減ったという事例があります。これは施設管理者も「私語が減らない」と悩んでいたもののなかなか解消できずに困っていた問題でした。介護相談員という第三者からの提言で解消できた好例です。

ただ、中には業務上の連絡や相談を廊下で立ち話として行うこともありますが、利用者に誤解されたり、いらぬ不安を与えたりといったことにつながるため、改善につながりました。

3-2.相談内容の見極めも重要

相談内容の見極めも重要

利用者の不満の中には誤解や考えすぎといったケースもあります。上記の例のように「寝ているから起こさないようにしよう」という介護職員の善意が「オムツや体位を変えてくれない」という不満につながったり、「職員が立ち話をしているのは自分の悪口を言っているのだ」といった誤解を招いたりします。そのため、介護相談は話を聞きながら事実を見極める必要があります。

  • 会話や行為の解釈の違い
  • 言葉の行き違い
  • 情報不足(事業所としては夜はなるべく起こさない方針ということを伝えていないなど)

をていねいに確認していきます。

また、利用者によってはいっぱい話しかけてほしいという人もいれば、そっとしておいてほしいという人もいます。このような個人の要望や好き嫌いが原因で不満になっていないかどうかを確認するのも仕事のひとつです。

一方で虐待につながる事例もあります。身体拘束や乱暴に身体に触れていないかどうかを確認しなければなりません。利用者が自分で説明できないことが多いため、家族からも聞き取りをします。このように介護相談員は悩みを聞くだけでなく、事実誤認がないかを見極める能力や公平な判断力が求められます。

4.介護相談員の数

厚生労働省の発表によると、2015年3月末現在で全国の介護相談員の数は4,687人、介護相談員事業を実施している市町村は509市町村となっています。実施市町村の割合はまだ29.2%ということで、全国的な広がりはこれからといえます。

その中でも富山県は市町村の実施率が100%で全国トップです。次いで佐賀県が95%、愛媛県が75%と続きます。一方でまだ取り組みが進んでいない市町村もあり、地域差があります。

4-1.地域での取り組み例

富山県富山市では22名の介護相談員が市内の91施設(特別養護老人ホーム33、老人保健施設18、グループホーム40)を訪問しています。施設の取り組み事例や意見交換会の様子などを「介護相談員だより」に掲載して、年に1回発行しています。

また、介護相談員として県の研修や現任研修に参加するほか、認知症など関連する研修にも参加して知識や理解を深めています。

まとめ

施設の利用者やその家族は、介護スタッフの対応に不満や疑問があってもなかなか伝えることができません。そういった場合に相談できるのが「介護相談員」です。介護相談員の役割をまとめると、次のようになります。

  • 介護相談員は養成研修の修了者で、かつ人格的にも介護相談に対する熱意の面でもふさわしいと判断された人が市町村に登録される
  • 施設を訪問した介護相談員は利用者の悩みや不安を聞き取り、事業所に提言し介護サービス改善や質の向上につなげている
  • 介護相談員は施設の行事に参加して他施設に内容を紹介したり、地域の取り組みを施設に伝えたりする

介護相談員は施設に入所している利用者が対象になります。在宅介護で悩みがある場合は、市町村の福祉課など担当の部署を訪問してみましょう。

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