シルバーハウジングとは?特徴やサービス内容を徹底分析

シルバーハウジングとは?特徴やサービス内容を徹底分析

親が高齢化して直面する問題が「住まい」のことです。子どもと同居できればいいのですが、離れて暮らす場合は何かと不安が伴います。

自立している高齢者には「シルバーハウジング」が選択肢のひとつとして考えられます。ここではシルバーハウジングの特徴やシステム、サービス付き高齢者向け住宅との違いなどを徹底的に分析しました。ぜひ参考にしてください。

1.シルバーハウジングとは?

シルバーハウジングとは高齢者向けに設定された公営の賃貸住宅です。バリアフリーになっている点と「LSA(ライフサポートアドバイザー)」と呼ばれる生活援助員のアドバイスや生活支援サービスが受けられる点が大きな特徴です。

シルバーハウジングは国が高齢者の安全な暮らしや利便性に配慮した住まいを提供することを目的に始まった事業で、国土交通省と厚生労働省が管轄しています。

1-1.シルバーハウジング・プロジェクトは昭和62年からスタート

シルバーハウジング・プロジェクトは昭和62(1987)年に当時の建設省(現在の国土交通省)と厚生省(現在の厚生労働省)が取り組んだ「シルバーハウジング・プロジェクト」によってスタートしました。現在も国土交通省と厚生労働省が管轄しています。

実際にシルバーハウジングを提供するのは地方公共団体や都市再生機構(UR)、住宅供給公社で2011年3月時点でシルバーハウジング・プロジェクトの管理団地は全国で約832団地、管理戸建ては23,000戸以上となっています。

シルバーハウジングには国のシルバーハウジング・プロジェクトに基づいて運営している公営住宅のほかに、高齢者の生活環境に配慮がなされている「シニア住宅」「シニアハウス」「シニアマンション」などがあります。いずれも賃貸住宅として提供されています。

なお、平成8年(1996)年度には制度が拡充されて障がい者世帯も対象に加えられました。

1-2.シルバーハウジング・プロジェクト事業が実施された背景

シルバーハウジング・プロジェクト事業が実施された背景には、高齢化社会が迎えるさまざまな問題があります。

国の調査では65歳以上の高齢者の数は年々増加し、平成17(2005)年は2,576万人だったのが2040年には約3,850万人に達する見込みとされています。日本人の人口の中で高齢者が占める割合は、2005年は約20%前後ですが2040年には約40%になると考えられています。

一方で高齢者の居住の場は約9割が在宅で、要介護の高齢者も約8割は在宅で生活しています。このように高齢になっても自宅で生活するケースが多いのですが、住宅内での高齢者の事故が増加しています。平成19(2007)年の厚生労働省と警察庁の調べによると、住宅に起因する高齢者の死亡事故発生件数は以下のように多発しています。

死亡事故の内容 住宅に起因する事故での65歳以上の死亡者数
浴槽内の溺死(浴槽への転落事故を含む) 3,162人
スリップ、つまずきなど同一平面上での転倒 1,003人
階段またはステップからの墜落や転倒 318人
建物からの転落 179人

(出典:http://www.mlit.go.jp/common/000031368.pdf

このデータからもわかるように死亡事故も多いのですが、高齢者が住宅内の事故が原因で入院するケースは死亡事故の約50倍も発生しています。

つまり、高齢者の多くが居住している住まいは、実は危険個所が多いということがわかります。

このような背景をふまえて国では高齢者に安全な暮らしを提供するために「シルバーハウジング・プロジェクト」を立ち上げました。特にバリアフリー化に関しては借家での対応が遅れていることから、国土交通省が補助金を出して公共住宅のバリアフリー化に力を入れています。

さらに高齢者の孤独死の問題解消や生活支援を行うこともシルバーハウジング・プロジェクト事業の目的のひとつになっています。

1-3.各地のシルバーハウジング・プロジェクト事業の取り組み

シルバーハウジング・プロジェクト事業は全国の自治体で取り組みが進められています。その一例をご紹介しましょう。

1-3-1.東京都「シルバーピア」

バリアフリー化され、緊急時対応サービスと安否確認システムなどが整備された公的賃貸住宅(都営住宅、市区町村住宅など)を提供しています。2014(平成26)年12月末時で都内で10,142戸。

1-3-2.神戸市「シルバーハイツ」

緊急通報システムを取り入れた公営(市営・県営)住宅を提供し、約30戸にひとりの生活援助員(ライフサポートアドバイザー)を配置しています。

なお、事業主体別に見たシルバーハウジング住戸数の提供が多い上位10団体(2006年3月末時点)は以下の通りです。

 都道府県 団地数 住戸数 市区町村 団地数 住戸数
1 東京都 146 4110 横浜市 119 3194
2 兵庫県 41 2072 神戸市 26 1437
3 愛知県 34 684 川崎市 12 551
4 大阪府 14 420 大阪市 18 336
5 北海道 7 161 世田谷区 13 284
6 神奈川県 5 113 熊本市 4 277
7 徳島県 4 109 豊中市 6 231
8 鹿児島県 11 76 名古屋市 10 230
9 栃木県 4 70 相模原市 6 205
10 福岡県 3 68 尼崎市 5 180

(出典:http://www.jusoken.or.jp/pdf_paper/2008/0723-0.pdf

2.シルバーハウジングの特徴

シルバーハウジングの特徴は大きく分けると次の2点があります。

  1. バリアフリーや手すり、緊急通報システムなどを設置した住宅行政(住宅の改装に対して国土交通省から地域住宅交付金など)が受けられること
  2. LSA(ライフサポートアドバイザー)による緊急時の対応や一時的な家事援助など福祉行政(厚生労働省の地域支援事業の一環)を受けられること

2-1.シルバーハウジングの特徴1~高度なバリアフリー

高度なバリアフリーとは住居の中の2ヶ所以上に手すりが設置されていること、屋内の段差が解消されていること、通行可能な幅の廊下を設けることなどがあります。一般の賃貸住宅では手すりが1ヶ所しかない物件がありますが、シルバーハウジングは数が多くなっているのが特徴です。

また、物件によっては浴室やトイレに緊急を知らせるブザーをつけているものもあります。

2-2.シルバーハウジングの特徴2~LSAによる支援

シルバーハウジング・プロジェクト事業の内容は事業主体(都道府県や市区町村)によって異なりますが、神戸市の公営住宅で実施しているシルバーハウジング・プロジェクト事業の取り組みでは、LSAがきめ細かな支援を行っています。

2-2-1.神戸市の取り組み例

平成19(2007)年に介護機能強化サービス(介護保険にはない在宅サービス)をモデル事業として実施しています。

その内容は、

  • 食事サービス(会食や配食)・食事や栄養・調理指導の実施
  • 巡回健康相談や健康体操教室の実施
  • 緊急時の手続き代行(緊急時の受診などの付き添い)や入院中の買い物などの支援

などがあります。

3.シルバーハウジングのメリットとデメリット

シルバーハウジングは都道府県や市区町村などでそれぞれに取り組みを行っています。また、高齢者住宅財団やUR都市機構も運営をしています。そのため入居条件やサービス内容などが微妙に異なりますが、シルバーハウジング全般を通してのメリットとデメリットをご紹介します。

3-1.シルバーハウジングのメリット

シルバーハウジングは一般の公営住宅などを高齢者用に配慮して提供しています。バリアフリーや手すりの設置などがあるので身体能力が低下する高齢者でも安心して暮らせるようになっています。

また、LSAによる見守りや緊急連絡、健康相談、家事援助などが受けられるのも大きなメリットです。さらに公営なので民間の賃貸住宅よりも家賃が安いというメリットがあります。

3-2.シルバーハウジングのデメリット

シルバーハウジングは基本的に自分のことは自分でできる高齢者が対象です。そのため、要介護4や5など重度になると介護保険の上限額を超えてしまいます。また、LSAによる健康相談はありますが、医師の治療や介護サービスが受けられるわけではありません。医療施設や介護施設がない点がデメリットだと言えます。

また、入居に際しては年齢や収入の条件があります。基本的に高齢者夫婦または単身となっているので、子どもや孫と同居できない点がデメリットになります(条件は施設によって異なります)。

施設によっては人気があり、入居に際しては抽選を行ったり、空室待ちになったりすることがあります。

メリット デメリット
  • 高齢者に配慮した安全な住居である
  • LSAによる生活支援が受けられる
  • 家賃が安い
  • 自立した生活ができる人が対象である
  • 医療や介護のサービスは受けられない
  • 入居に年齢や年収、家族構成の条件がある
  • 人気が高く抽選になることがある

4.シルバーハウジングとサービス付き高齢者向け住宅の違い

シルバーハウジングとよく似た高齢者向けの住宅に「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」があります。どちらも高齢者住宅でさまざまなサービスが提供されていますが、違いは何でしょうか?

4-1.サービス付き高齢者向け住宅とは

高齢者住宅には「高齢者専用賃貸住宅(高専賃)」「高齢者向け優良賃貸住宅(高優賃)」「高齢者円滑入居賃貸住宅(高円賃)」がありましたが、2011年10月に施行された「高齢者住まい法」の改正によってこれらの住宅が廃止され、新たにできたのが「サービス付き高齢者向け住宅」(サ高住)です。

サービス付き高齢者向け住宅の最大の特徴は「民間企業が運営している」ということです。住宅の内容はバリアフリー化と利用者の安否確認や生活相談サポートなどが義務づけられています。

サービス内容はシルバーハウジングと大きくは変わりませんが、民間企業が運営しているために家賃が高く、入居に際しては連帯保証人が求められます。

また、要介護の高齢者でも入居が可能ですが、介護職員や看護職員が常駐しているわけではありません。そのため、介護が必要な方は訪問介護サービスの利用が必要になります。さらに重度の要介護状態になった場合は介護が充実している施設に移ることになります。

4-2.シルバーハウジングとサ高住の違い

シルバーハウジングとサービス付き高齢者向け住宅の違いをまとめてみました。

シルバーハウジング サービス付き高齢者向け住宅
運営 自治体や公共団体など 民間企業
施設の設備 バリアフリーなど安全面に配慮 バリアフリーなど安全面に配慮
サービス内容 LSAによる生活相談など 安否確認や生活相談サービス
入居条件(施設によって若干異なります) 60歳(または65歳以上)の単身の高齢者または高齢者夫婦で自立している方 60歳または65歳以上の高齢者で自立または要介護・要支援でも入居可能
家賃 安い
  • 初期費用として100万円程度必要
  • 毎月の家賃はシルバーハウジングより高い

シルバーハウジングもサービス付き高齢者向け住宅も重度の要介護状態になると、介護や医療の設備が整った施設に移ることになります。

5.シルバーハウジングに入居するには

シルバーハウジングに入居するには入居一時金と家賃が必要です。また、年齢の条件もあります。

5-1.シルバーハウジングの入居条件

シルバーハウジングに入居するには、次の条件を満たす必要があります。

5-1-1.年齢の条件

  • 60歳以上の個人。または夫婦のうちどちらかが60歳以上の方、障がい者単身世帯または障がい者と配偶者からなる世帯(ただし施設によって65歳以上としているところもあります)
  • 入居に際しては高齢の単身または夫婦または同居する親族が全員65歳以上であることなどと決められています。そのため、健康な子どもや孫との同居はできません

5-1-2.年収の条件

  • 公営住宅の場合は年収が一定以下であること
  • UR賃貸住宅などが運営するシニア住宅の場合は基準月収が夫婦の場合は33万円以上、単身の場合は25万円以上または一定額の貯蓄があること(条件は施設によって異なります)

5-1-3.健康面での条件

  • 自炊できる程度の健康状態であること(常時介護が必要な場合は入居できません)
  • これらの条件を満たした上で申し込みを行います

5-2.シルバーハウジングの費用

公営のシルバーハウジング・プロジェクトによる公営住宅に入居する場合の家賃は利用者の年収などで決まりますが、月額1万円~10万円程度と幅があります。

一方、シニア住宅の場合は通常の賃貸住宅と同じように毎月家賃を支払う方法と生命保険の一時払い終身年金保険に加入し、保険会社から支払われる年金を家賃に充当する方法があります。

シルバーハウジングへの入居を検討される場合は条件が合うかどうかを確かめましょう。

まとめ

シルバーハウジングはUR都市機構や高齢者住宅財団、住宅供給公社などが提供している賃貸住宅です。

その特徴をまとめました。

  • シルバーハウジングはバリアフリーや緊急通報システムなどがあり、高齢者が安心して暮らせる
  • 介護の支援などはないので身の回りのことが自分でできる自立した人が対象
  • ライフサポートアドバイザー(LSA)の生活相談や家事支援などが受けられる
  • 入居は60歳以上(施設によっては65歳以上)の単身または夫婦であること
  • 家賃は民間の賃貸住宅より安いが、人気が高く抽選になることがある

このように便利で安心なシルバーハウジングですが、人気が高く入居待ちになっているところが多いようです。安くてサービスもいいので、老後を過ごす選択肢のひとつとして検討されるといいでしょう。

スポンサーリンク

シルバーハウジングとは?特徴やサービス内容を徹底分析